ガタンゴトーン
結局なんだったんだろうな
数日前のこと。
筆者はこの時、駅前のスーパーで半額になっていたメンチカツを買って帰宅する途中でした。日中どころか夜すらも暖かく過ごしやすい陽気に包まれた、そんな晩。時刻は24時を回っていて、終電もとっくに終わっている時間です。
家まであと100メートルというところで、
「すみません」
はじめは話しかけられていることに気付きませんでした。イヤホンをしていたのもありますが、駅からの帰り道で他人から話しかけられるかもしれないなどというかもしれない人生は歩んでいないからです。
「あの」
そこでようやく話しかけられているのが自分だと気付き、足を止めてイヤホンを外します。
「なんでしょう?」
無愛想選手権関東大会で軽く優勝できそうなくらいの無愛想が出ました。仕方ありません、さっきスーパーのレジで「袋ください」って言ったのを最後に人間と話すスイッチを切っていたのですから。
声のした方を見ると、そこには自転車に跨った青年が居て。青年は筆者に問いかけます。
「池袋ってどっち方向ですか?」
……池袋? いやいや、筆者も池袋は知ってます。7G事件以降人が動物や他の物体に変わってしまったあの池袋……あ、違う? とにかく、池袋は知ってます。知ってますが、どっち方向とは?
迷った末に、恐らく池袋があるであろう方角を指差し、
「……だいたい、あっち側です」
なんとも曖昧な回答を絞り出しました。いや、知らんし。電車に乗ってると一生地理感覚が養われんのですよ。
「ありがとうございます」
ちゃんと人にお礼の言える若者でした。青年は礼言うと、筆者の指さした方向に向かって自転車で走り去っていきました。
……で、なんだったんでしょうか。
真夜中自転車男の正体を推測する
もう一度整理すると、
・時刻は24時過ぎ
・場所は大通りから一本入った住宅街
・相手は自転車(クロスバイク)に跨った青年
・目的地? は池袋
なんだこいつ。まじでわかりません。わからないので、勝手に推測してみましょう。
仮説1 youtuber
真っ先にこれが出てくるあたり、筆者も令和に生きてんなと実感します。「人はすれ違った人の指し示す方角に走り続けて目的地に辿り着けるか」みたいな企画だったのでしょうか。
いや、違う。当人のどこにもカメラは付いてなかったし、カメラを持った同行者がいる様子もありません。没。
仮説2 旅人
暖かくなると必然、旅人が街に増えます。車だけでなくバイクや自転車、果ては徒歩で旅をし、時に日本一周までしてしまう者すら現れます。伊能忠敬かよ。そんな旅人がなんらかの理由で池袋を目指していた。ありえそうです。
否、これも違う。旅人にしては、彼はあまりに軽装すぎました。大きなリュックもなければ、旅をしてきたような疲れもあまり見られません。没。
仮説3 迷子
ちょっと近所まで出かけるつもりが道に迷ってしまい、スマホの充電も切れてしまったかわいそうな青年説。池袋に行くのか帰るのかわかりませんが、とにかく道行く人に聞いてその方角に自転車を走らせる。何時間目かわからない、何人目かもわからない案内人が筆者だったのかも……
ンなわけねーな。没。
てなわけで真相は闇の中です。もしかしたら、動物が人間になってあたりを散策していたのかもしれませんね。おのれ7G許すまじ。