ゆたんぽを抱いて寝る。

ゆたんぽを抱いて寝る。

猫のこと、本のこと、アニメのこと、野球のことetc...思いついたまま、気の向くままに。

ゆたんぽを抱いて寝る。

買い物客その1になる遊び

「モブ」の画像検索結果

コンビニに行くとどこにでもいるモブになる遊びをしてます

 

大事なことは最初に言っておく

今日の記事、決してパクリではないのだがどこかで読んだ記憶があると思った聡明な読者諸兄のために先に書いておくと、事務員Gさんのnoteに前同じようなネタがあったので、おおよそ件の記事のパクリみたいなものだと思ってもらって構わない。

Gさんの文章はいいよなぁ。読んでいて楽しい。憧れる、というのとはまた違うけれど、好きな文章のひとつではある。

 

舞台はいつものコンビニです

筆者には、行きつけみたいなコンビニが何店舗か存在する。通勤途中にあるミニストップ、職場近くのファミリーマート、帰宅時間になるといつもお弁当に値引きシールが貼ってあるローソン。およそこの辺りの店舗が生活の糧になっている。

時刻は18時過ぎ。

帰宅途中の筆者はローソンの駐車場に車を止め、店の中に入る。このときからすでに「買い物客その1になる遊び」は始まっていて、気をつけるべきは服装だ。大事なのは、「綺麗すぎず、不潔すぎない」丁度いい”仕事終わり感”を身にまとって入店することだ。ダブルのスーツでピカピカの革靴姿は18時過ぎの住宅街のコンビニという場においては不正解、不釣り合いすぎるのだ。ワイシャツの上に作業着、会社の名前入りのジャンパー姿に安全靴。これがおよそ18時過ぎのコンビニにおける年齢相応の最適解である。

さて、本日のお目当てだが、もちろん値引きシールの貼ったお弁当だ。面倒なら夕飯にしてもよし、飲んだ後のシメにしてもよし、そのまま残しておいて翌朝のごはんにしてもよしの万能食料だ。この季節、台所という名の天然冷蔵庫に放置しておけばゆうに2日は軽く保つ。この時間にこのコンビニに行くという時点で目的は決まっているのだが、焦ってはいけない。これではいやしくも安売り弁当をたかりに来た奴じゃないか。これはモブのすることじゃない。半額弁当に命をかける少年少女達の姿は時として主人公にすら成り得るのだから。

店内に入ると、レジ横に並んだお弁当を一瞥――するだけ。そのまま右向け右で雑誌売場へと移動する筆者。仕事帰りのサラリーマンがコンビニでまずすることは値引き弁当を猛ダッシュで買っていくことじゃない。雑誌の立ち読みだからだ。もちろん、実際手にとって雑誌を立ち読みする必要などない。あたかも雑誌でも立ち読みしてこの疲れた身体を少し休めに来ましたよ、という雰囲気を作り出すための所作だ。同じような格好をした同じような年格好の男性が既に買い物客その2として立ち読みしている真っ最中だとなんとも都合がいい。気になる雑誌があれば手に取ればいいし、そうでなくとも棚の前で逡巡する振りでも構わない。

そうして雑誌コーナーを通り過ぎたら、いよいよ本命の弁当コーナー……はまだ早い。仕事終わりの人間が家に帰ったら何をするのか。そう、晩酌である。晩酌を前にコンビニに入ったということはつまり、オツマミを調達する、酒を切らしていたら酒を調達する。それがコンビニでやるべきことなのである。

間違ってもコンビニで生ビールなんて買っちゃいけない。コンビニで生ビールを買って優越に浸れるのは酒を飲み始めたばかりの大学生か金に糸目をつけない馬鹿のどちらかのすることだ。30代男性会社員が手に取るのはそう、麦とホップだ。第三のビールこそが薄給サラリーマンの程度なのだ。おつまみはコンビニオリジナルのビーフジャーキーあたりを選んでおくのも、いかにも独身がこれから一人で飲みますよ感が出ていて良い。

それからカップ麺のコーナーを一瞥して新作が出ているか確認しつつ、ようやく目的の弁当コーナーである。ここまで随分と時間がかかった。でも安心して欲しい、この間に弁当が飛ぶように売れて無くなる心配などないのだ。もし売り切れてしまったら、その時は潔く諦めよう。間違ってもレジ前でうろたえてはいけない。モブというのは基本的に「必要な場以外でセリフを与えられていない」キャラなのだから。

弁当は何を選んでも良い。これだけの長い道のりをかけてたどり着いた約束の地だ。何人たりとも、たとえ神であれどこの選択を阻むことなど許されない。今日のお弁当は唐揚げ弁当500円(200円値引きシール付き)。普段500円の弁当がなんと300円。革命である。気分がいいのでカップのコーヒーも買って帰ろう。ローソンのホットコーヒーが筆者は大好きだ。

弁当を選んだらレジへ向かうのだが、ここからは非常に重要なシーンに突入する。モブとして最も難易度の高い場面と言っても過言ではない。何しろここから本脚本の主役とも言える「コンビニ店員」との「会話」が発生するからだ。レジにものを置いたら、きっと「コンビニ店員」はモブである筆者に問うてくるはずだ。「お弁当温めますか?」「ポイントカードはお持ちですか」と。日本人として誰しも直面したことがあるであろうこの場面。あるいは先手を打って「弁当温めなくていいです、ポイントカードありません」などと言いながら商品をレジに並べる者もいるかもしれない。しかし、それはモブとして最もやってはいけないことなのである。「ポイントカードはお持ちですか」「お弁当温めますか」は主役であるコンビニ店員のセリフなのだ。モブ風情が、主役様のセリフを遮ってはいけない。しっかりと相手のセリフが出るのを待つ。モブとは違い主役というのはセリフの順番や言い方を変えても許される。それがアドリブというやつだからだ。そしてモブはそのアドリブにも最低限の動きで乗っていかなければならない。全ての会計を終えてから「お弁当温めますか」と聞く店員もいれば、一番はじめに聞いてくる店員もいる。中にはバーコードをスキャンしながら聞いてくる猛者もいる。モブである筆者は、焦らず、冷静に、決して早口に成りすぎず「そのままで大丈夫です」とだけ答えて待つ。

この時点で、手にはスマホが握られている。今流行りのキャッシュレス決済というやつだ。モバイルSuicaは画面を開かずともタッチで完了するのがとても楽で嬉しい。しかし、焦ってはいけない。モブに会話が許されるのは一瞬だけ。店員が会計を告げた時のみだ。「Suicaでおねがいします」言いながら軽くスマホを見せる。これが最低限にして最大限できるモブとしての会話だ。間違っても「お会計643円に」のあたりで早まって「Suicaで」なんて言ってはいけない。繰り返すが、モブたるもの、主役のセリフを遮ってはいけないのだ。

こうして無事に会計を終えた筆者は、レシートを受け取ると「どうも」と軽く礼を告げて店を後にする。車のエンジンをかけ、店の駐車場をあとにする。ここでようやく、買い物客その1としての役割を終えることになるのだ。

一連の動き、とくにレジ前のやりとりが淀みなくスムーズに行った時の感覚と言ったらたまらない。きっとあの瞬間に、世界で筆者と同じようなやりとりが何千万と行われていると考えると、非常に愉快極まりない。何度も足を運ぶコンビニにおいて1番困るのが、店員と無駄に親しくなってしまい無駄に話しかけられることである。モブから準主役くらいにまで格上げされてしまっては、逆に部屋着に寝癖頭で行ったりできなくなってしまう。準主役には準主役の振る舞いが要求されるからだ。筆者にとってコンビニで大事なことは、いつまでも買い物客その1、ただのモブでありつづけること。今日もその役割を演じきれた嬉しさを噛み締めながらコーヒーを……

 

あっ、コーヒー買い忘れた。

 

そんなことに気がついたとて、さすがにコンビニに戻ることは出来ない。

「コーヒー買い忘れた~~~~~~~!! ばか~~~~~~~~~~~~~!!」自分以外誰も乗っていない車中で大声で独り言を吐き出しつつオーバーリアクションを取るさまは、さながらトレンディドラマの主人公みたいである。さっきまでモブだった人間がいきなり主役抜擢とは、なんとも忙しいご帰宅であること。

プライバシーポリシー