読み終えた後にこの表紙を見るとグッと来るものがある
終わりゆく世界で大人のエゴに振り回されながらも藻掻き続ける少年と少女のお話
2017年にアニメ化もした枯野瑛先生の「終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?」シリーズ(角川スニーカー文庫)の5年後を舞台にした新シリーズがコチラ「終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか?」シリーズ、その第6巻になります。
前作「すかすか」で〈獣〉と死闘の末に訪れた一時の平和。廃劇場の上で偶然出会った堕鬼種(インプ)の青年フェオドールと、成体妖精兵となった黄金妖精(レプラカーン)の少女ティアット。次第に2人は38番島を舞台とした大きな事件に巻き込まれていくことになる。切なくて、息を呑むような展開が多くて、でもみんな必死に生きてて、堕鬼種でも黄金妖精でも一人ひとりに物語があって。浮遊大陸を舞台にした青年と少女の物語は、きっと読む人の心に深く突き刺さること請け合いです。
ついに明かされる秘密。そしてひとつの物語が終わる時
第6巻にあたる本作ではいよいよ〈獣〉についての秘密や聖剣(カリヨン)についての秘密が明らかになり、コリナディルーチェ市を舞台にしたひとつの物語が完結することになります。
例によって内容はネタバレ防止(というか読んで欲しい)の意味を込めて何も書きません。
読み終えた感想としては、「死ぬほど良かった」というのと「こんな終わり方ってあるのかよ……」というふたつの、相反するものでした。
前作にあたるすかすかもそうだったんですが、この物語ってどうあがいても絶望なんですよね。〈獣〉という正体不明の化物が定期的に浮遊島を襲ってきて、それに立ち向かう妖精は〈聖剣〉を振り回し、最終的には妖精郷の門を開いて自爆特攻して〈獣〉と心中していく。そんなお話なんですよ。
だから、ある意味今回の結末は「最悪の結末を回避しながらギリギリ実現できる最大限のハッピーエンド」だったのかもしれないです。放っておけば、それこそ今作の舞台であるコリナディルーチェ市はおろか、浮遊大陸そのものが消滅してもおかしくないくらいの大きな事件でした。だから、フェオドールの取った行動ってすごく合理的で、すごく現実的で、すごく理想的なものなんだな……っていうのが読んでて嫌というほどわかってしまって。堕鬼種は嘘付きだっていう話をフェオドールが事ある毎にしていたんですが、最後まで嘘付きだったんだなぁと思うと、急に涙腺を刺激されてしまいました。
そして、再び互いに剣を向けあったティアットとラキシュの戦いの結末。
もうね、こればっかりは読んで、としか言えない。
筆者は読みながらベシャベシャに泣いてました。新幹線の中だったんですけど、人目も憚らずに泣いてました。結末は本当に自分の目で確かめてほしいんですけど、なんていうかラキシュはどこまでもラキシュらしかったし、〈聖剣〉って、妖精って、一体なんなんだろうな、と読後に考えさせられる、そんなコリナディルーチェ市で起こった事件の結末でした。
7巻と8巻と番外編も買ってあります
頑張って感想記事っぽく書いたつもりなんですが、やっぱり上手く書けないですね。
読書記の塩梅が未だによくわかりません。個人的にはこの手の記事って未読の人の購買意欲を掻き立てるとかそういう目的じゃなく、どっちかっていうと既読の人が「うんうんそういう内容だったよね」とか「あぁーそういう感じ方もあるのかぁ」とかそういう扱い方をして欲しいと思ってるんですよ。でも、面白いものは未読の人にも面白さが伝わってくれたら嬉しいし、それきっかけで買ってくれたらもっと嬉しいわけで。
もしこの記事を読んで少しでも興味が出た人は、とりあえず前作にあたるすかすかがプライムビデオで見放題なのでそれを見ていただければと。田所あずささんの歌う主題歌がとても素敵だし、アニメを見ていいなぁと思ったら是非すかもかシリーズを買って読んでもらえたら、筆者としては嬉しい限りです。