写真は菊之丞師匠のTwitterより
初めて弟子の会に呼んでもらいました。
— 古今亭菊之丞(公式) (@kikunojorakugo) 2022年7月10日
満員御礼、皆さま雛菊の応援団、素敵なお客様でした。
ネタ下ろし(初演)の「お見立て」も、お客様にノせて頂いて、お笑い頂けました。
今後とも雛菊をご贔屓のほど、どうぞよろしくお願いいたします。#古今亭雛菊 #古今亭菊之丞#落語 #寄席 #ばばん場 pic.twitter.com/4xDq4Mc21D
四万六千日に高田馬場で落語を
高田馬場に昨年オープンした演芸場「ばばん場」
オープン当初から様々な噺家が会を行ったり、時には講釈師が会を行ったりと、盛んに会が開かれているキャパ50程度の演芸場である。こちらで先日7月10日に行われたのが、この5月から2つ目に昇進した、古今亭雛菊さん(古今亭菊之丞門下)の勉強会だ。
前座時代から菊之丞師匠の会や寄席で何度もお目にかかっていた、そしてありがたいことに寄席の披露目も見られた、そんな雛菊さんの初めての会。終わってみれば笑いが絶えない、外の暑さにも負けないほど熱気に溢れた会だった。その様子を、筆者の目線で少しばかり振り返っていくことにしよう。
隙あらば後援会員アピール
爆笑の開口一番、熱演二席、合間に師匠渾身の一席
13:30の開場前から待機列が出来るほどの盛況ぶり。雛菊さんへの期待、そして古今亭という大きな亭号の存在感を改めて知ることになった。開演前には雛菊さん手づから物販を行い来場者と交流を行う様子も見られ、非常にいい時間が流れた。
最初の会というのは泣いても笑っても一度しかない。そんな大事な会の開口一番を務めるのは、桂枝平さん(桂文生門下)。かけたネタは雛菊さんリクエストという「道具屋」だったが、これが実に破天荒。筆者も様々な道具屋を聞いてきたが、こんなにぶっ飛んだ道具屋は初めて聞いた。腹を抱えて笑った。会場も大爆笑。筆者もこの一席で枝平さんが好きになった。是非真打になっても寄席でトリを取るようになっても、この道具屋を突き詰めていって欲しい。
続いて、本日の主役の登場だ。
大きな拍手と共に高座に上がる雛菊さんの表情は実に晴やかで、それでいて堂々としている。立派な2つ目の顔だ。マクラが無いのが悩みということだが、これからどんどん増えていく。それもまた芸のうち。
一席目は「庭蟹」
洒落の上手い番頭と洒落のわからない旦那のちぐはぐなやりとりが面白いこの噺。すっとぼけた旦那の表情や仕草が、実に面白い。間のとり方が上手いのもあってか、会場からは次々に笑いが起こる。ウケるというのは稽古の一番の成果だ。大盛況のまま一席目は終了。
中入り前に上がるのは、菊之丞師匠。
初めて弟子の会に呼ばれました、と語る菊之丞師匠の表情は柔らかく、嬉しさがにじみ出ている。人の会は気楽でいいものだ、なんて口では言っておきながらも、四万六千日というこの日にピッタリな大根多「船徳」を一切手を抜くこと無く演りきる。圧巻の熱演とはまさにこのことだ。爆笑の連続であっという間に中入りへ。絽の透け感がなんとも涼やかなのと、それがより色気を増大させてくれたことを、ここに付け加えておくことにする。
中入りを挟み、新婦お色直し――もとい、装い改め雛菊さんの二席目に入る。しっかりマクラを喋るのが初めてだとすれば、一日に二席演るのも初めて。2つ目になって、出来ることがどんどん増えていく。マクラもそのひとつ。お喋りが大好きだと話す雛菊さん、本当に楽しそうな様子が伝わってくる。暗いニュースも一気に吹き飛ばしてくれるような、持ち前の明るさをこれからも見せて欲しい。余談だが、読者諸兄の中に快眠法をご存知の方が居たら、是非雛菊さんのTwitterへDMを送って欲しい。
さて噺の方はと言うと……会場に集まった人の多くは当然雛菊さんの、そして菊之丞師匠のファンだ。「三道楽煩悩なんて申しまして……」ここでピンと来た人も多いだろう――「お見立て」だ。「師匠に教わった通り」大師匠(二代目古今亭圓菊)の物真似もキッチリと入れていく。これだけで誰に教わったか分かるというもの。自分の会に向けて大ネタを仕込んでいると話していたが、師匠が聞いている前で「お見立て」を演るのは相当の緊張があったことだろう。それでも持ち前の明るさと、稽古量がしっかりと伝わる演じ分け、間のとり方。これらが合わさって、サゲに向かってどんどん笑いが大きくなっていくのがわかった。額に汗しながらの熱演は見事なもので、最後は鳴り止まない大きな拍手に見送られながら高座を降りた。
所々で言い間違えはあったが、そこはネタおろし。当然のことだ。むしろ、正真正銘のネタおろしが見られるというプレミア感を得られるのが、勉強会の楽しみなのだ。これが一ヶ月後、三ヶ月後、半年後、一年後にどう進化していくのか。それを追いかけられるのは、まさにこの会場に来ていたお客様だけの特権なのである。筆者もその一人として、次の会を楽しみにしたいと思う。
ステッカー他、グッズや各種ご案内は公式サイトにリンクが有るので購入はそちらから。
2022.7.10 ばばん場
古今亭雛菊 2つ目昇進祝いの会
雛菊勉強会 vol.1
桂枝平 道具屋
古今亭雛菊 庭蟹
中入り
古今亭雛菊 お見立て