そんな記録いらない
朝は戦争
通勤ラッシュ、という言葉には一生縁がないと思っていました。
そんな自分が今、通勤ラッシュに揉まれながら仕事場に運ばれていく。なんという数奇な運命でしょう。本当に、人生何が起こるかわかったもんじゃありません。朝はおかげさまで(?)見事に通勤ラッシュの時間帯に電車に乗るわけでして、座れるかどうかは運次第といったところ。
運がいいと家の最寄りから仕事場の最寄りまで座り通せるときもあれば、運が悪いと約1時間立ちっぱなしということもザラにあります。まさに現代の戦争、大人のイス取りゲームが日々繰り広げられています。そんな熾烈な争いにおいて、たまに見かける第三の勢力というか海の民というかそういう存在。目の前の座席が空いているにも関わらず、頑なに座らない。座らないけど、座らせようともしない。延々と空き続ける座席。彼もしくは彼女は一体何が目的なのか。
とりあえず、彼もしくは彼女が近日中に開かずの踏切とかに引っ掛かって仕事に遅刻することを心から祈っておくことにします。いや、まじで座れ。いいから座れ、でなければ俺に寄越せ。
夜は修行
酒を飲んで乗る電車というのは、どうしてああもいい心持ちなんでしょうか。
酔っ払ってふわふわした状態で乗る電車は、ちょうどいい揺れ心地とちょうどいい暖かさが眠気を誘います。最近はJRも私鉄も関係なくしっかりと夏は涼しく冬は暖かい、時々眼鏡のJKとすれ違う快適な社内環境を提供してくれます。
その御蔭で、酔っぱらいは度々眠気と戦いながら最寄り駅で降りるという重大な使命、あるいは不可能任務に挑むことになるわけです。人生という名の養成学校で落ちこぼれだった筆者を導いてくれる世界最強のスパイはどこにもいません。つまるところ己の実力のみでこの過酷な試練に立ち向かわなくてはならないわけです。
「お客さん、終点ですよ」
誰ですかLITさんは今成功率0.5の超絶難関な任務に挑み世界の平和を秘密裏に守っている最中なんですから邪魔しないでください。
目を開けると、そこには制服に帽子姿の男が立っています。敵でも味方でもなく、紛れもなくそれは車掌でした。はて、終点…………終点!?
しかしそこはLITさんもバカじゃありません。ここで動揺するようではまだまだ二流。さもここで降りるつもりでしたと言わんばかりに席を立ち、改札を出て、スマホを取り出します。
……で、ここはどこ?
調べたら、自宅まで徒歩1.5時間と出てます。なるほど、これは4駅くらいぶっ飛ばして寝過ごしましたね。外は氷点下の寒空。目の前には、黒塗りの高級車わかりやすく言うならクラウン・コンフォートもっと簡潔に言うならタクシーが停まっています。
一瞬考えた後、手を上げてタクシーに乗り込みました。
いや、もう歩く気力もないって。
東京生活数ヶ月目にして、ついにタクシー帰宅という実績を解除しました。都内じゃないところで目が覚めるのも、時間の問題です。いや、それだけは避けたいところですが。