終演後。いい笑顔
足立区花火大会に向かう人達を見ながら
去る7月20日。例の花火大会が中止になったその日、筆者は墨亭で文治師匠の会を見ていました。会の途中からゴロゴロと雷が鳴っていたのは聞こえていましたが、まさか雨まで降ってくるとは。傘を持たずに来てしまったので帰りが心配でしたが、肝心の落語会そのものは大変に満足なものだったので、筆者としては問題なしです。むしろこの後移動した先で土砂降りに降られたわけですが、それは別の記事で。
夏はお船遊びの話がよく似合う
「百年目」なんかもこの季節特有の噺だよなぁと思いながら暑さに耐え忍ぶLITさんですこんばんは。この日は文治師匠が1人で3席、実に豪華な会です。それでいて、墨亭は今まで長年やって来なかった噺が聞ける実験場的な場所にもなっている(文治師匠談)ので、それもまた楽しみになってますね。
船徳 桂文治
四万六千日は過ぎましたが、夏といえばやっぱり「船徳」でしょう。文治師匠の「船徳」は聞いたことがないなと思っていたら、やっぱり何十年ぶりに演るのだとか。徳さんがもう絵に書いたようなぐうたらで口先だけの若旦那で、非常にハマっていたように感じます。途中くすぐりも入れつつ、それでいて笑いを切らさないスタイルはまさに文治師匠の「船徳」と言ってもいいでしょう。
サゲが今まで聞いたものと違うタイプだったんですが、後の解説を聞いて納得。なるほどなぁ、考えられてるなぁ。この夏は何度か演る噺だと思いますので、気になった方は是非足を運んでみては。
おかふい 桂文治
テレビでは放映できない噺というのは幾つもありますが、この「おかふい」もそのひとつだと文治師匠は話します。理由は簡単で、梅毒を扱った話だからというもの。このなんでもかんでも禁止にしてしまうテレビ様のスタイルは如何なものかと思いますが、それはまた別の話。
以前文治師匠の「鼻ほしい」も聞いたことがありますが、ふがふがの演技が実に堂に入っている。鼻がもげてしまった男女ですが、それでも面白おかしく語ってくれるのが落語の良いところ。落語に完全なハッピーエンドは無いというのは文治師匠の言葉ですが、その通りちょっと怖くてでもちょっとハッピーエンドな、そんな噺でした。いやまぁ梅毒で鼻がもげるならいざ知らず、カミソリで鼻を削ぐってのは……ギャグテイストで明るく演る、文治師匠のこだわりがよく分かる高座でした。
新聞記事 桂文治
最後は軽く(?)寄席でも良くかかる噺。でも文治師匠の「新聞記事」は長いこと聞いた覚えがない、そんな印象です。
この「新聞記事」ですが、寄席ではたいてい序盤で二ツ目が演る事が多く、そのため真打の師匠は余程の得意ネタでもない限り寄席で演らない事が多い気がします。途中天ぷら屋の竹さんの家に泥棒が入った下り、ここをテンポ良くパパパっと言ってるのが気持ちいい。ラストの「入ったウチが……」の流れもそうなんですが、この噺はとにかくリズムが大事。だからこそ、しっかりと身についた人の芸は面白い。そう思わせてくれる「新聞記事」でした。