メイとエドの関係性が大変に好きです
スイスの地下で『悪魔使い』と『天使』は『人形使い』と出会い、そして――
完結目指して読み直しシリーズ第四段。
こう見るとタイトルが安定しませんね。まるで原作の刊行ペースのよう
舞台はアメリカ大陸からヨーロッパへと移り、主人公は一巻以来の錬・フィアのカップルもといコンビです。一巻の頃よりもずっと近づいた二人の心が合間合間で見られて心温まりますね。そんな二人が便利屋として受けた仕事の成り行きで出会ったのが『人形使い』エドワード・ザイン。人間としての感情が乏しく、はいかいいえしか言えないエドは本当に人形のようで、しかし錬たちと行動をともにする中で徐々に人間らしく変化していく。Ⅳの一番の見どころはこの、エドの成長物語なのだと読み終えて改めて感じています。
だからこそ、ラストの展開は実に心苦しいというかある意味エドの成長の証というかなわけですが。絶対に上手く行かない『世界樹』の発芽実験。亡きエリザベート・ザインの遺志を継ぐため(とエドは思ってたわけですが実はそもそもエリゼはこの実験そのものを破棄していたというのがあとにわかります)に淡々と実行に移す。錬たちと出会う前のエドならきっとそうしていたことでしょう。それが、確実に”人間”として確立したからこそ、暴走した『世界樹』の中枢制御と一体化することで成長を止めるという選択をしたわけで。そしてまた、青空のある世界に憧れと希望を抱く錬やフィアの姿というのは、この終わりゆく世界の中でものすごく美しく見えた、そんな作品でした。
『龍使い』は覚悟を決める。友達のために
Ⅳにおけるもう一つの陣営が、ヘイズとファンメイのHunter Pigeon組です。
ファンメイの治療のため一時的にシティ・ロンドンの軍に加わったヘイズは、逃亡したウィリアム・シェイクスピアとそのパイロットエドワード・ザインを捕獲すべくスイスの地下施設へと侵入します。そこで錬とヘイズが戦闘になったりフィアの同調能力がファンメイ(というか龍使い)に対して相性が最悪だったりということがわかるわけですが、ひょんなことからファンメイは自分の身体がいずれ原型を保てなくなることを知ってしまい、そのまま街へ飛び出し、そのまま街中で倒れてしまいます。
そんなファンメイをフィアが助けるっていうのがね、なんかやっぱりフィアらしいなと思っちゃうわけです。だってどっからどう見ても敵なんですよ。つい先日自分たちを襲ってエドを捕獲しようとした張本人のうちの一人なんですもの。そんなフィアに最初こそおそれを抱いていたファンメイですが、徐々に打ち解けて最後は本当に友達のように仲良くなっていきます。それは同時にエドとも仲良くなる時間でもあり、だからこそ自分の身の危険を顧みない作戦に打って出ることが出来たわけですよね。下手をすれば自分が自分でいられなくなる、そんな危険を持ってなお『世界樹』の暴走を止めるために行動するファンメイが実に痛ましく、それでいて美しい物語がそこにありましたね。
『悪魔使い』の本領発揮
ヘイズの指パッチンはヘイズにしか使えない(I-ブレインを演算能力に全振りした結果の演算速度S)高度な情報解体論理回路なわけですが、それを規模縮小版といえど作り上げられてしまう錬の技術は圧巻でした。
本家本元の情報解体には遠く及ばないものの、錬が発動できるレベルの論理回路を、マクスウェル(分子能力制御)と並列起動することによって初めて構成するというまさに錬にしかなし得ない方法で作り上げたファインマンが最後のキーになるというのが、読んでいてめちゃくちゃに心地よかったです。ふと思ったんですが、指パッチンが出来るのであればフィアの同調能力もその気になれば似たような能力を生成できるのでは? いやでも流石に人体という情報の塊というか他人のI-ブレインなんていう情報の塊中の塊にアクセスするのは流石に劣化版と言えど無理があるのか。
おそらくⅤが読み直しで言うと最後になるハズです
おぼろげな記憶ですが、サクラが出てきたところまでは読んでた記憶があります。というかⅣでちらっと出てきた黒髪二つ結びの『賢人会議』の人間がおそらくサクラだと記憶の奥底が光っていた気がするので、たぶんⅤの上もしくは下までは読んでるんだと思います。サクラの脳内CVはずっと斎藤千和さんと決めていたので、ここまでずっと登用しないまま来ました。増え続ける魔法士とそれを取り巻く登場人物の数に、筆者の貧弱な脳内声優アーカイブが耐えうるのか。次巻も楽しみながら読みます。
脳内CVメモ(敬称略)
エリザベート・ザイン 田中敦子(改めて御冥福をお祈りいたします)
リチャード・ペンウッド 黒田崇矢