極上でした
スパイ教室とは
――世界は痛みに満ちている。
世界大戦と呼ばれる歴史最大の戦争が集結して、十年。戦禍の惨状を目の当たりにした政治家は、軍事力ではなくスパイにより他国を制圧するような施策の舵をとっていた。
(本編より抜粋)
第32回ファンタジア大賞で大賞を受賞し、今最もアニメ化が期待される(LITさんのLITさんによるLITさんのためのアンケート、有効回答数1)ラノベ作品、それがスパイ教室なのです。
本編は、第二部がどんどんアツい展開になっていくところ。そしてこの短編集02は、そのちょっと前。第一部と第二部をつなぐ、そんな物語になってます。本編ではなかなか描かれなかった少女たちの、普段よりちょっぴりギャグ多めでコミカルで、時には年頃の少女らしい一面を描いた短編集。
読み終えた時、きっとあなたはこう口にするはずです。
「極上だ」と。
短編集01の読書記はコチラ
ギャグとシリアスがいい感じに入り混じってて最高に楽しい一冊でした
「クラウスは、アナタを ている」
一枚のメモが誤解を生み、誤解が誤解を生み、陽炎パレスはいつも以上に大賑わい。果たしてメモには一体何が書かれていたのか。このメモは一体誰宛に書かれたメモなのか!? そんなドタバタで大笑い、ちょっぴりシリアスな短編集、早くも二冊目の登場です。
01のときにも書いたんですが、短編って本編で描ききれなかったギャグ要素多めのお話がたくさん読めるっていうのが一番の幸せなんだと思うんですよ。
スパイというテーマで物語を描いている以上、本編はどうしてもシリアスで血の気多めなシーンが多くなります。その中でバランスよくギャグを散りばめ、ちゃんとキャラクターが活かされている本編は本当に竹町先生の手腕の為せる技だなと思うんですが、短編はギャグに全振りしたお話が読めて大変に良かったですね。
コードネーム『愚人』――尽くし殺す時間なの
個人的にツボったのは、エルナが主役になった『case3 エルナ』でしょうか。
さすが竹町先生が一押しだけあって、終始ゲラゲラと笑いながら読んでました。本編がどんなにしんどくて息を呑むような作品であっても、短編ってこういうギャグと笑いに満ちた世界があるんだという、なんだか昔のファンタジア作品を思い出させてくれるようなそんなお話でした。
終盤のシーン、こんなに『灯』のメンバーがクラウス含め息ピッタリなことある!? って思うくらいの揃いっぷりで腹抱えて笑いましたよね。最後に匙をぶん投げるクラウスとエルナの悲痛な叫び、失礼ながら極上だと一人で手をたたきながら笑って読んでました。エルーナ様、ばんざーい!
「不幸なの……」というエルナの声すら笑えてくる、そんな至極の一話です。
あと、そろそろエルナも公式HPに加えてほしいの……
(画像はYoutubeのPVから切り抜き)
コードネーム『夢語』――惹き壊す時間よ
もうね、この短編集全部いいのでイチオシを選ぶのって難しいんですけどあえてもう一話選ぶとしたらこれかなと。ティアの能力は、もう本編でこれでもかってほど見てきたわけですが、それでもこの一話でそれをも上回る本気、彼女の能力の真髄を見せ付けられるとは思ってませんでしたよね。
でね、この話ティア主役回なのはもちろんわかってるんですが、敢えて言わせてもらっていいですか。
この回に出てくるモニカ、サラのこと好きすぎでは????
普段あんまり感情を表に出さない……まっとうなスパイらしいモニカが、恋愛詐欺師がサラにちょっかいかけてきた際に静かに、いや明らかにブチギレてるんですよ。こんなこと、今までありました??????(いや、ない)
本編でも度々サラのことを認めてるような発言を繰り返しているモニカですが、ここまで露骨にサラへの愛情を示したのって初めてなのでは。この話、ラストの展開も含めてめっちゃ好きなお話でしたね。
――で、「恋愛詐欺師を本気で惚れさせに行くサラの衣装」イラストはどこで見られるんですかトマリ先生!?
世界は痛みと、ほんの少しの笑顔でできている
描き下ろしの幕間とラストを見ると、クラウスにとって今の『灯』がどれほど大切な存在なのかぐっとわかる気がします。話の流れ的にティアだけは元々『灯』に引き入れるつもりだったわけですが、全員揃って初めて(もちろんクラウスも含め)『灯』だし、このメンバーだからこそクラウスに笑顔が戻ったんでしょうね。
今回も極上な一冊でした。ありがとうございました。
……今更ですが、この記事を読みに来てる人は既読の民だけだと思ってるんでエルナの存在は隠しませんよ?