相変わらずネタバレしかありません
後半は「あんな曲もアンプラグドで!?」な選曲も多めです
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彗星(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
緞帳が上がり、開演前同様に音合わせが行われる。音合わせが終わり、コーラス隊のハーモニーが会場を包み込み、続いてピアノ、弦楽、パーカッションと続いていく。背景は一面の星空。間違いない、「彗星」だ。真理恵さんのパーカッション捌きが特に光る一曲。本当にこのコンサートに欠かせない存在の一人だ。
満点の星空の中、マッキーの歌声がどこまでも高く、透き通るように響き渡る。特にサビのコーラスとのハーモニーが素晴らしく、この編成だからこそ出来る完璧なパフォーマンスを見た気がする。最高の後半の幕開けだ。
冬のコインランドリー(Pf.、Perc.、Cho.)
「冬らしい歌を」「並んで聞きたい曲」と聞いてまさか、と思ったが、そのまさかだった。筆者が大好きなマッキーの冬歌の名曲「冬のコインランドリー」をこんな素敵な編成で聞けるなんて。
とにかく大嵜さんのピアノがたまらなく愛おしい。本当にどこまでもまっすぐに演奏されるのと、そこにマッキーの歌声が重なり、冬の夜道を歩く二人を描くように澄み切って耳に飛び込んでくる。寒い寒い道を二人並んで歩く姿や、乾燥機が回っているコインランドリーの中で話す二人の姿、ふかふかになったタオルを抱きしめながら帰路につく二人の姿、それらを描くのに、このシンプルな編成はまさにうってつけだったと言えよう。
好きになって、よかった(加藤いづみ)(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
ここで、コーラス隊の一人加藤いづみさん、今井マサキさんの紹介。筆者も深く知らなかったのだが、いづみさんとはデビューが近いことから、昔から事あるごとに仲良くさせてもらっていたのだとか。そんなマッキーがたっての希望で今回実現したのが、名曲「好きになって、よかった」をマッキー、加藤いづみ、今井マサキの3人で歌うというものだった。
発売から30年以上経っているというのに、曲調も、歌声も、一切色褪せることのないいづみさんの歌声に、マッキーとマサキさんの声が重なる。いづみさんも言っていたことだが、マッキーが原曲キーで歌ってくれていることが嬉しい。ずっと大好きな曲を歌う3人の姿がたまらなく愛おしく、こんな素敵な一幕が見られたこのコンサートの素晴らしさを、今日何度目かわからないが噛み締めていた。
LOVE LETTER(Pf.、Str.、Perc.)
アンプラグドな編成ならでは、というマッキーの紹介でセットリストに入ったのが「LOVE LETTER」だというから、これはもう首が取れんばかりに頷くしかない。ここまで圧巻の演奏を見せてくれたピアノ、弦楽、パーカスが見事に融合し、マッキーの歌声と併せてこの実験室で新しく生まれながらもどこか懐かしさを感じる「LOVE LETTER」が、会場に響き渡る。
この曲は本当に切なくてあったかくて、マッキーが生まれ育ってきた日本のチベット高槻の景色がありありと映し出される曲なのだが、シンプルな編成が故にマッキーが息を吸う音までこちらに届くのもあり、マッキーの見たいつかの光景が映し出されるような気がした。また、息をするのを忘れていた。
彼女の恋人(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
「こういう曲もやるんです」という挑戦的な一曲として次に演奏されたのが、名曲「彼女の恋人」だ。通常のコンサートでも比較的登場頻度が高いこの曲ではあるが、いつもはゴリゴリのバンド編成で演奏されるわけで。それをアンプラグドでやったらどうなるの、という挑戦的な選曲だったわけだが、見事新しい「彼女の恋人」に仕上がっていた。ピアノとストリングスを主旋律にしつつ、パーカッションが下地を支え、コーラスが入ることで重厚感が増す。そしてそこにマッキーの歌声が乗る。
「LOVE LETTER」や「冬のコインランドリー」がこのコンサートのために入った曲だとしたら、「彼女の恋人」はそれとはまた違った意味で曲の良さを再認識させてくれる素敵な一曲に仕上がっていた。サビ前の部分でがなるように盛り上がっていくマッキーの姿が印象に残っている。
Hungry Spider(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
彼女の恋人からMCを挟まず、演奏陣がイントロを奏でていく。知らないイントロだ。この曲は一体なんなのか。会場全体が「?」がひとつになったその瞬間、コーラス隊が答え合わせをする。
「――Hungry Spider♪」(~Spider♫)
いやぁ……まさかこの編成でHungrySpiderが聞けるとは。「彼女の恋人」以上に「どういう仕上がりになるの!?」という選曲だったが、このコンサートで初めて(!)手拍子が入る曲になっていたりバイオリンが神がかっていたり、本当に見どころ満載でこの実験室の中でしか見られないというのが本当に勿体ない。そんな新たなHungrySpiderに、会場からは惜しみない拍手が送られる。いやぁ、本当に素敵だった。マッキーもノリノリで歌っていて、本当に楽しそうで何より。
四つ葉のクローバー(Pf.、Str.、Perc.)
ノリノリになって、会場のボルテージは最高潮に達した。そんな熱くなりすぎた会場の熱気を少し冷ますような次の曲は、今一度の春の曲で。「こういう時代だからこそ歌いたい」そうマッキーがMCで語った曲は、真理恵さんが帯同しているツアーの選曲としては、そしてアンプラグドな編成のコンサートにはうってつけの曲だった。
所謂「ライフソング」に分類されるマッキーの曲の中でも、特段「幸せ」について深く語っているこの曲。マッキーの歌声にも、心做しか力が入ったように感じる。世界の色んなところで色んなことが起きている2024年。そんな世界だけど「幸せ」は必ず見つかる。そんなメッセージを、マッキーの歌声が届けてくれる。いつもだったらマンドリンやギターの音色が彩るこの曲も、この日はピアノと弦とパーカッションがシンプルに、それでいて優しく奏でてくれる。会場の熱気とはまた違う、胸のうちに浮かぶあったかい気持ちに包まれるのが分かった。
HOME(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
「今日は本当に、ありがとうございました」
この挨拶が流れたということは、それは即ちコンサートの終わりが近いということ。最後に持ってきたのが「HOME」それもこんな最高の研究員と共にマッキーが届けてくれるのだから、もう最後の最後にボロボロと泣くしかなかった。
この曲は、ラストにしてある意味このコンサートの1つの「答え」な気がした。アップテンポな曲やロック調な曲、ジャジーな曲、35年という活動期間で数多くの曲を生み出したマッキーだが、やはりというかなんというか、今回のような編成であるならば「HOME」のような曲が一番似合っているのだと実感した。最高のピアノと最高のストリングスと最高のパーカッションが演奏を奏で、最高のコーラス隊と共に歌を紡ぐマッキーの姿、優しくあったかい歌声、猫のいる時間と空間こそが幸せなのだと、ホームなのだと気付いた主人公の気持ちが一気に流れ込んできて、本当に幸せでいっぱいな気持ちになった。
止まない拍手に見送られながら舞台袖に捌けていくマッキーを、筆者もまた大きな拍手で見送った。
クリスマスメドレー(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
Silent Night
The Christmas Song
Grown-Up Christmas List
チキンライス
アンコールは、コーラス隊のSilent Night(きよしこの夜)からスタート。アンプラグドなコンサートならではの、素朴で、それでいて優しい演奏と歌声。その後マッキーが再び登場し、クリスマスメドレーを奏でていく。ちょうどクリスマスイブイブなこの日にぴったりで、いつものバンド編成とは違うゆったりとした時間の中で、クリスマスソングに耳を傾ける。こんな素敵なクリスマスイブイブが今まであっただろうか。
最後は「チキンライス」。元々浜ちゃんが歌ってマッキーがコーラスという原曲だからこそ、コーラス隊の存在が非常に重要な曲だと気付かされる。今まで何度かコンサートで聞いてきた「チキンライス」だったが、やっぱりクリスマス前に聞くのが一番いい。
A HAPPY NEW YEAR(松任谷由実)(Pf.、Perc.)
Listen to the Music収録曲ではなく、自身のアルバム「Believer」収録曲のユーミンカバー曲。おそらくだが、筆者がコンサートで聞くのはツアー以来かもしれない。東京公演ではまさかのユーミンの前で歌うという事態になったこの曲を、神戸では気兼ねなく歌えるとマッキーは笑って言う。年明けはもう少し先だが、一足早いお祝いをいただく。
元々がシンプルな構成のこの曲だからこそ、大嵜さんのピアノと真理恵さんのパーカッションがどこまでもまっすぐに、マッキーの歌声とともに入り込んでくる。カバー曲を歌うときのマッキーは自分の曲以上に丁寧で、この日も歌詞の意味や世界観を噛みしめるように歌い上げていた。アンコールまでくれば、喉の調子は完全に仕上がっている。ピアノで始まって、ピアノで終わる。いい「A HAPPY NEW YEAR」だった。
In the Snowy Site(Pf.、Str.、Perc.、Cho.)
本当の本当に最後の曲。冬の曲で始まったコンサートは、やっぱり冬の曲で完結する。
今一度ピアノ、ストリングス、パーカッション、コーラス、そしてマッキーが全員揃っての「In the Snowy Site」
しんしんと降り出した雪を見ている猫の様子や、街の様子、恋を自覚する主人公の目線。全てを丁寧に、色濃く、しっとりと彩ってくれる演奏が、完璧なコーラスが、いつも以上に大きくはっきりと聞こえるマッキーの歌声が、神戸の町を雪景色に変える。鳴り止まない拍手は降り止まない雪のように会場を埋め尽くしていき、この瞬間誰もがこの空間に、マッキーの歌声に、研究員の演奏や歌声に恋をしたことだろう。
次の”ラボ”にも期待してます
このコンサートを通じて本当に生楽器の良さやコーラスの存在感、それら最高の研究員がマッキーと合わさった時に起きる化学反応をひしひしと実感することになった。全ては編曲を手掛けた音響監督トウミヨウ氏の、そして最高のパフォーマンスを生み出してくれた全てのミュージシャンのお陰である。興奮冷めやらぬままセットリストとツアーロゴを写真に収め、外へ出て息を吸う。冬の神戸の街は思った以上に寒かったけれど、それ以上に身体の内側は先程までのコンサートであったまりきっていた。本当に、素敵な研究発表会だった。ありがとうマッキー、ありがとう全ての研究員の皆様。
ツアーロゴと、お花。クリスマスらしく華やかなお花もかわいいね。
マキハラボ第2弾も楽しみにしてます。きっと、必ずや。