ゆたんぽを抱いて寝る。

ゆたんぽを抱いて寝る。

猫のこと、本のこと、アニメのこと、野球のことetc...思いついたまま、気の向くままに。

ゆたんぽを抱いて寝る。

【ネタバレ有り】2024年3月16日「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELIING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」感想レポ①【槇原敬之】

Tシャツ、今回はこれにしました

 

全国38箇所を巡る時間旅行が、始まる

――あの日 地下鉄の改札で 急に咳が出て

    涙にじんで 止まらなくなった――♬

 

スポットライトの中、優しい歌声が会場一杯に響き渡る。

2024年3月16日、筆者は立川ステージガーデンの3階客席にいた。2年前の5月と、全く同じ会場だ。ステージ上で楽しそうに歌い、駆け回る主役も、また同じ。

マッキーこと槇原敬之、54歳。筆者が世界で1番愛する、数多くの名曲を生み出し続け今尚ポップスの第一線を走り続けているシンガーソングライターの全国ツアーが、この瞬間立川ステージガーデンから始まった。

実に2年ぶりのツアーは、6年前に大人気を博した「TIME TRAVELING TOUR」(通称TTT)の第2弾である。90年代、00年代、10年代と30年以上の時間を旅してきたマッキーが果たしてどの年代にタイムトラベルするのか、ファンの間ではセットリストの予想が絶えなかった。90年代を愛する古参のファン、00年代から色濃く現れるいわゆる「ライフソング」世代のファン、あるいは全く初めてマキハラを聞くという新規のファンまで巻き込んだ壮大な時間旅行の行き先は、果たして――

 

「ANSWER」

開演前、ステージにはこれまでのアルバムジャケットがずらりと並んでいた。デビューアルバム「君が笑うとき君の胸が痛まないように」から最新アルバム「宜候」までが並ぶ、まさに時間旅行のパンフレットのような構図。その垂れ幕がひとつずつ上がり、バンドメンバーが姿を見せる。

そして、中央の「宜候」の幕が上がり、中からカラフルなスーツに身を包んだマッキーが登場する。そうして、このTTT2の第一曲目に選ばれたのは、デビューアルバム「君が笑うとき君の胸が痛まないように」の第一曲目である「ANSWER」である。

 

この瞬間「宜候」の存在する2024年から時間は一気に、1990年にタイムトラベルする。時間旅行装置マキハラは、最強のバンドメンバー達を乗せ、90年代へ飛び立つ。

 

松本圭司さんのピアノが、とにかく心地よい。マッキーの優しく力強く、そして若干の緊張を含んだ歌声を優しく包みこんでくれる、そんな演奏。何十回、何百回と聞いた「ANSWER」なハズなのに、一瞬で存在しない駅の改札の場面が脳裏に浮かぶ。切なくて、恋しくて、等身大の男女の恋愛を描いた珠玉のバラードに、思わず目頭が熱くなる。歌い終わりの瞬間の割れるような拍手は、まさに旅の始まりに相応しい合図だった。

 

MC

初手から「タイムトラベリングツアー」が言えなくて噛んでしまうマッキー。かわいい。正式名称が記事タイトルにもある通り「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELIING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」という大変に長いものなので、全部言おうとするならばそれは噛むのも仕方がない。

今回のツアーのコンセプトについて、マッキーは高らかにこう宣言した。

「今回のツアーは、ズバリ90年代の曲を演ります! 1stの時は『こういうツアーを今後やっていきますよ』というお披露目的な感じだったのでメジャーな曲多めでやりましたが、今回は違います。今までコンサートでもほとんどやってこなかった、90年代の曲たちをがっつりやっていく、そういうツアーになります」

――そう来たか。いや、そう来てしまうのか!

この瞬間、己の予想が大きく外れたことに衝撃を受けつつ、それ以上のワクワクが押し寄せてくる感覚に胸の高鳴りが止まらなかった。90年代と言えば、筆者が幼少期。まだマッキーと出会う前の時代の曲たちを今こうして今のマッキーの歌声で聞けるのだ。もちろん、後追いでアルバムは全て買って聞いている。だからこそ、リアルの90年代で聞けなかったあの曲やこの曲を聞ける。こんな嬉しいことはないだろう。

もちろん、当時をリアルタイムに過ごした古参ファン達の心境を考えると、それ以上であることは間違いなかっただろう。最高の時間旅行がこれから始まる。そんな期待と共に時間旅行装置は再び動き出す。

 

「80km/hの気持ち」「さみしいきもち」「僕の彼女はウェイトレス」「2つの願い」

デビューアルバム「君が笑うとき君の胸が痛まないように」から「80km/hの気持ち」(時速80キロメートルの気持ち)。イントロが流れただけで全身に鳥肌が立つ思いだった。このイントロは本当に天才的だ。一発でこの曲だとわかる、唯一無二にして一度聞いたら忘れられないドラムとシンセサイザーの音が魅力的なイントロと、そして歌詞。これがデビューアルバムの時点で確立されていたというのだから、本当にマッキーの才能が恐ろしい。

「僕」がいて「君」がいて「彼」がいる。「君」の気持ちはずっと「彼」に向いていて、「僕」の思いやおしゃれには全く気がついていない。そんな「僕」の切ない恋の歌。マッキーは時間が経って作る歌が変わったなんて言う人がいるけれど、決してそんなことはない。結局この構図は後に「運命の人」であったり「だらん」であったりに連なる系譜の祖になっているのである。筆者もたぶん生歌で聞いたのはこれが初めてで、まさかこの曲を聞けるなんて本当に思っていなかった。サビの伸びが心地良いのに、反比例するように歌詞が切ない。まさにお手本のような「マッキーの作るラブソング」だ。

続いてはアルバム「SELF PORTRAIT」より「さみしい気持ち」。別れたあとに必死に強がってるダメダメな男のダメダメな失恋ソングだ。CD音源はバリバリの90年代サウンドなのだが、この曲をマッキーバンドの演奏で聞けるというのが本当に貴重で嬉しい。間奏部分はギターの音色が美しく、なにより今回は90年代サウンドを2024年の技術で再現するという試みを見せてくれた屋敷豪太さんのドラムが本当にカッコいい。

爽やかな曲調で晴れた日の町中を自転車で走る明るい曲なのに、どことなく終わってしまった恋愛が少しだけ心の何処かに住み着いているような、明るさに振り切ることが出来ない歌声がたまらなく素敵だった。

からの「僕の彼女はウェイトレス」である。さぁ困った。何が困ったって、こんなに大好きな曲ばかり流れてきて良いのかと。イントロが流れた瞬間に叫びだしそうになった。個人的にはこの曲が大大大好きな上に、筆者の中のマッキー原初体験の中のひとつにこの「僕の彼女はウェイトレス」も収録されているからである。加えて、この曲も本当になかなかコンサートでかからない。調べたら最後に演奏したのは今から10年近く前の「Loveavle Pepple」ツアー以来とのこと。今回は毛利泰士さんが猛プッシュして入れた曲が何曲かあったらしいが、勝手にこの曲もそのひとつだと思っている。なにしろ、高い。サビがずっと高い。マッキーがなかなかやらないのもそのせいだと勝手に思っているくらいに、ずっと高い。実際サビは結構キツそうだった。あのマッキーがキツそうなのだから相当である。でも敢えて言いたい。毛利さんまじGJ。

あと何も示し合わせてないのに、ちゃんと途中でマッキーが振ったら会場が声を揃えて「大好き!」って言ってるの(含筆者)を見て、さすがマッキーファンはすごいなぁと思うなど。

そして「2つの願い」なんだろう、ここまでずっとマッキーの見本市を見させられているような不思議な感覚に陥っていた。誰もが思い描いたことがあるだろう、マッキーの作る「ダメな男のダメな失恋ソングだけを聞き続けたい」と。中でも初期マッキーからしか得られない絶妙な切なさと若い甘酸っぱさを凝縮したエキスを摂取したいと。その願いが叶ったような気がして、すでに頭はクラクラと回り始めていた。

「2つの願い」それもシングルバージョンだ。音源は何度聞いただろう。でも、生で聞ける機会なんてずっとなかった。一人の男の恋愛が徐々に終焉に向かって動き出していく、その様子を天気の移り変わりを通して描いていく最高の失恋ソングだ。このあたりから会場の音響にも慣れてきたのか、マッキーの肩の力や喉の力も少しずつ抜けてきたように思える。そして相変わらず豪太さんのドラムがたまらなくカッコいい。筆者の位置からだとちょうどバンドメンバーの演奏が見下ろせる形だったので、鋭く力強い演奏が90年代サウンドを再現しつつ更に昇華させていく。最後にドラムの音で楽曲全体がピタリと終わるのもまた、恋の終わりを突きつけられるような気がしてたまらなかった。

 

②に続きます。

プライバシーポリシー