ゆたんぽを抱いて寝る。

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【ネタバレ有り】2024年3月16日「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELIING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」感想レポ③【槇原敬之】

2way地味にありがたい。普段遣いします

 

その②はコチラ

l-i-t.hatenablog.jp

 

「No.1」「SPY」「Hungry Spider」「PENGUIN」

「休憩は十分とれたでしょうか。後半戦、フィーバータイムはここから続きます」

そうマッキーが高らかに宣言し、後半戦の火蓋が切って落とされる。その第一曲目に選ばれたのは「SELF PORTRAIT」より「No.1」だ。おいおいおいおい、ここへ来てこんなブチ上がる曲とは。マッキー、やってくれるじゃないか! イントロの「1・2・1・2・3・4!」で一気にパッと会場のテンションが最高潮にのし上がる。演奏陣も、マッキーも、ノリノリで音圧はさっきまでの比じゃないくらいに高まっている。

ここからはマッキーもステージを縦横無尽に歩き回る。1階席、2階席、そして3階席にまで目線を送ってくれて、手も振ってくれる。本当に楽しそうな姿がずっとステージに溢れかえっている。バンドメンバーも同様で、どのパートも大活躍できる素敵な音源が、最高のメンバーの演奏で仕上がっていた。後半の幕開けに相応しい、最高の一曲だ。

拍手も止まぬうちに、ノータイムで聞き慣れた――何十回何百回何千回と聴き倒したイントロが流れる。途端に会場のボルテージは更に上がっていく。それはもう仕方がないことで。だって、ここで「SPY」が流れるのだから。正直、前半戦でだいぶ不安になっていたライトなファン層も多かったんじゃないかと思っている。なにしろ、初期中の初期アルバムから一度もコンサートで演奏されてこなかった楽曲を引っ張ってきたり、ややもすればカップリング曲すら持ってくるような、ある意味マッキーマニアに向けたコアなコンサートになるんじゃないかと、筆者ですら思っていた(もちろん、マッキーが言っている通り古い曲も新しい曲として楽しめる要素は十二分にあったわけだが)。しかしここへ来て「No.1」「SPY」と人気曲、それもハイテンポな曲に明らかに構成を変えてきた。これはズルい。古参ファンも、新規ファンも、ややもすれば初めてマキハラに触れる一見ファンすらも魅了する圧倒的な歌唱力と演奏力、そして「No.1」に続いてノリノリなマッキー。全てが完成された「SPY」に見事撃ち抜かれた瞬間だった。

そのまま楽曲は次へ。背景のツアーロゴがカラフルに彩られ、なんだか聞き慣れないイントロ? 繋ぎのメロディ? 会場全体に「これ、何の曲だっけ?」と疑問が浮かんでいき、3階席の端の端まで行き渡ったその瞬間。

――Hungry Spider(Spider)♪

この時耳に飛び込んできた、そして筆者の口からも飛び出した会場全体を揺らすほどの悲鳴混じりの歓声はずっと忘れない。最高潮は「SPY」じゃなかった、ここだった。どの曲も勿論珠玉の名曲揃いなのは間違いないのだが、あの演出とこのタイミングはズルい。誰もが0コンマ数秒でわかるこの曲のタイトルは、もう出ている通りアルバム「Cicada」より「Hungry Spider」だ。実らない恋を貫くよりも大切なあの子の幸せを願い、あの子を愛したという事実だけを食べるという選択を選んだ、恐らくマッキーの90年代ラブソングの中でもトップクラスに悲痛で、至高の「ダメな男のダメな恋愛ソング」。コンサートでは比較的選ばれることの多いこの楽曲、しかし本当に何度聞いても色褪せない名曲。最高という言葉はこの楽曲のために用意された言葉だった。

途中でメンバー紹介。相変わらず各メンバーがずば抜けて天才的なミュージシャンが故に、メンバー紹介時のパフォーマンスは目を見張る物がある。秋山さん、今回は連れ去られたりしなくてよかった。

 

「雪に願いを」「3月の雪」「どんなときも。」

Hungry Spiderから引き続き、MC無しで楽曲リレーは続く。

「こういう曲もやりますよー」イントロに載せてマッキーが語りかける。アルバム「SELF PORTRAIT」から「雪に願いを」熱くなりすぎた会場の熱を少し冷ますように、再び落ち着きのある楽曲が流れる。ベルの音が流れると、会場は一気に季節外れのクリスマスムードへ。このたった一音、たったワンフレーズで季節をガラリと作り上げられるマッキーの才能は、本当にすごい。今まで夏の日差しが降り注いでいた中、たったワンフレーズでクリスマスの景色へと変わるのだから。

この「雪に願いを」知名度としては「冬が始まるよ」「今年の冬」等に比べると少し落ちるものの、クリスマスソングとしては筆者の中でかなり順位が高い。シンシンと雪が降り積もるクリスマスの夜、大切な誰かに届くようにと歌われたこの歌は、ちょっと遅れたクリスマスプレゼントとして会場に確かに届いていた。

からの「3月の雪」である。秋山、山本ダブルギターの演奏が美しいハーモニーを奏でる。何度もマッキーのコンサートに足を運んでいるが、本当にこの二人の息の合った演奏と、そこに同じく息の合った演奏を奏でてくれるメンバーの演奏が一体になる。そこにマッキーの歌声が乗り、渾然一体となって得も言われぬ青春ソングとなって会場全体を包みこんでいく。筆者個人の話をすれば、この曲を聞いたのは大人になって随分経ってからだった。それこそ、後追いで初期のアルバムを買って聞くようになった頃なので、とっくに学生身分から離れていたわけだが……改めて会場で、マッキーの生歌で聞くとこの曲の良さが染み渡る。決して明るく順風満帆な学生生活ではなかったものの、数少ない友人知人と過ごしたあの頃や、卒業のあれこれが思い出される。卒業というと桜のイメージが強いが、敢えて雪を降らせることで別れの不安やそれを含めた印象深さを演出してくれる。ラストのフレーズをみんなで歌えたのが、たまらなく楽しかった。筆者も忘れたくないよ、こんなに素敵なら。3月の雪が流れるコンサートのシーン。

「今日は本当にありがとうございました!」

この挨拶が聞こえたら、楽しかったコンサートもいよいよラスト一曲である。今までだったらコンサートのタイトル曲を持ってくる位置に今回持ってきたのは――「どんなときも。」だった。アンコールじゃなく、コンサートのラスト。つまりこのツアー「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELIING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」の、90年代マキハラを代表する曲としてマッキーが「どんなときも。」を選んだのだ。それは当然といえば当然なのだけれども、この「どんなときも。」という楽曲は最早90年代マキハラの代表曲というよりは、日本の90年代ポップスシーンを代表する曲と言っても過言ではないだろう。ラスト一曲であることを噛みしめるように、それでいて歌う楽しさを抑えきれないかのように、ステージ上を縦横無尽にかけずりまわるマッキーの姿が、とても愛おしかった。バンドメンバーとも時折目配せしつつ、しっかりと会場全体に笑顔を、素敵な歌をあますところなく届けてくれる。

好きなものは好き。これからもマッキーが好きと胸を張って言い続けよう。楽しい楽しい90年代へのタイムトラベリングツアーのラストに相応しい、最高の「どんなときも。」だった。

鳴り止まない拍手を浴びながら、マッキーとバンドメンバーがステージ前に勢揃いする。その間もずっと拍手は止まらない。TACHIKAWA STAGE GARDENに集まった2500人の観客全員が、最高の時間旅行をした何よりの証拠だった。全員手を繋いでの挨拶が終わると、メンバーの退場。これにて楽しかったタイムトラベリングツアーもおしまい……というわけには勿論行かず。

これだけ楽しい時間旅行だもの、もう少しだけ90年代に留まりたい。バブルが弾けても尚、どこかハッピーで楽しかった90年代に浸りたい。その気持ちはきっと観客だけじゃなく、マッキー達も感じていることだろうから。

 

長かったレポもいよいよラスト、その④に続きます。

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