
だからホラーはダメなんだって
公開前から何かと話題になっていた映画「近畿地方のある場所について」を見てきました。元来ホラー映画やホラーゲームがダメな人間ではあったのですが、数年に1回くらい、文字通り怖いもの見たさで劇場に足を運んでは「も、もうホラー映画なんてコリゴリだよぉ」と言いながら帰って来るのをやってます。その、何年かに1回が今日だったわけで。
雰囲気から和製ホラーなのはわかっていたのですが、加えてどうも2chオカ板臭が半端ない。オカ板と共に大人になってきた筆者としては、流石にこれは見に行かざるを得ない。そういうわけで見てきた感想です。思い切り主観だしガッツリネタバレしますので、見たくない人と初見で楽しみたいにはブラウザバックを。自己責任です。
心霊番組とかチェンメとかニコ生配信とか、俺の人生に寄り添いすぎて怖いんだって
Twitter動画から始まった時点で、なんとなく察しました。あぁなるほどこういうテイストの作品ねと。友人が失踪したので情報ください系ねハイハイと。オカ板で5億回見てきたあれですねと。
物語は文詠社のオカルト雑誌「超不思議マガジン」の編集長、佐山が特集記事の原稿と資料を持ったまま失踪するところから始まり、残された紙資料や映像資料からその足跡を追うというものなんですが、映像資料のクオリティがどれも「本当に実在したのでは」というレベルのクオリティなんですよ。20年以上前の林間学校の映像の、おそらく8ミリで撮ったのかな? という画質や手のブレとか、絶対これ「笑ってコラえて」と同じスタッフが関わってる番組だよねみたいな編集の雰囲気とか(この映画も日テレ製作だし)、絶妙に2015年くらいにニコ生で過疎配信やってたであろう、ノートPCのWebカメラで自撮りしながら配信するニコ生主のスタイルとか、とにかくどれをとっても「お、俺はこの映像を知っているぞ」と思わせてくる強烈な何かを絶え間なく打ち込まれ続けるわけです。
そしてそこにちょっとした非日常、人ならざる何かが介在するという恐怖。よくよく見たら画面の端になにか写ってるじゃんねぇ待ってなにこれ怖い!!!! の連続に、どんどん引き込まれていきました。とにかくこのモキュメンタリーパートの完成度が高すぎる。そんな作品でしたね。
結局人間が一番怖いんだなって
ここからはガッッッッッツリネタバレになるんですが、結局人間が、宗教ってやつが一番怖いんだよなぁ、と言うのが見終わって改めて振り返った感想です。「あまのいわやと」とかいうどう贔屓目に見ても新興系カルト宗教、そこに一時期と言いながらどっぷり浸かりきってしまった千紘がすべての元凶にしてラスボスだったのだと、最後の最後に繋がるっていうね。
そしてそれを知ってしまった時には小沢も、そしてここまで映画を見てきた視聴者でさえも、何もかもが手遅れというあの瞬間がね、たまらなく恐怖でした。見終わってから全部つながるんですよね。あれだけ「手を引け」「無理はするな」と言っていた千紘が、発狂しきって死んだ佐山から託された「あまのいわとや」の映像を見たあたりから急にスイッチがはいるというか、強い使命感のような何かを持って「近畿地方に行く」と己から言い出したことが。
あの時点で千紘はわかっていたのでしょうね。あの日消えてしまった石が、それを強く望む人のところに現れるのだと。そして石は生贄と引き換えに願いを叶える、あるいは強い力を与えるのだと。そして、本来生贄にするハズだった佐山はそのカラクリに気付き、自ら命を絶った。残る生贄は、小沢しかいないのだと。そりゃあ亡霊の1人や2人くらい撥ね飛ばしてでも目的地に向かいますわなぁ。あれは石というか小沢を巡った千紘vs亡霊の超絶バトルシーンなのだとわかってしまうと、二週目があれば楽しく見られそうです。
石をぶっ壊すとか言っていたはずの千紘が、祠に石がなかったことについてどうしてああもキレ散らかしていたのだろうかとそこに恐怖を覚えていたわけですが、そりゃあ石を求めてはるばる近畿地方まで来たんですから、まぁキレ散らかしますわなと。一時期なんて言ってましたが、千紘が一番ガッツリあまのいわとやに、ましら様に魅了されてしまっていたのでしょうなぁ。
そして小沢は目玉のような化け物に取り込まれて石に食べられてしまうわけですが、あれを経て改めて冒頭の、そしてラストの「私の友人が消息を絶ちました」という情報提供を求める動画を載せる意味。最後の最後に、赤子(?)と共にスクリーンのコチラがわに語りかけたその意味。これって、小沢の情報じゃなく石の情報さがしてるのかなぁ……と思うと。ねぇ?
啓蒙高まりすぎて上位者見えちゃってんじゃんエンドはちょっとな
モキュメンタリーの完成度の高さに反して、正直微妙な終わり方だなと思ってしまったラストの展開。いや別にホラー映画なんだから救いなんてなくていいし小沢がモグモグされてしまってもそれはそれで彼になんの思いもないので構いやしないのですが、最後に出てきたましら様だかまさる様だかオヤシロ様だか……最後のは違いましたね。とにかくそいつらの見た目が完全に上位者じゃんと思ってしまったのは、あるいは筆者がかつて獣狩の夜にヤーナムを闊歩したからなのでしょうか。いやどう見ても月が出ていて赤子の鳴き声がしてヒトのなり損ないみたいな異形が現れて目玉がワラワラってのはそれはもう完全に上位者のそれでしょう。
小沢が啓蒙溜めすぎて完全に上位者見えちゃってんじゃんこれ……みたいなビジュと展開にしか思えなくなってしまって、ある意味この映画で一番恐怖から離れて見られたのはここかもしれません。まぁ、そこまで恐怖全開にしたらLITさん夜眠れなくなっちゃうんでこのくらいで良かったのかもしれませんが。
兎にも角にも、全体としてはいいホラー映画でした。ではまた、5年くらいあとにホラー映画とは再開しましょう。あー、すっごい怖かった。