若者の街にあってなかなか味わいのある駅ですよね
若者とリア充の町「原宿」に異物が混ざる日
9月23日、秋分の日。一年で二度しか無い、昼と夜の長さが同じ日。夏の晴れやかさが徐々に陰り、秋色の絵の具が町を彩り始める、そんな特別な日。
初ワンマン&バースデーライブを開催するには、なんともおあつらえ向きな日取り。
数年ぶりに原宿駅の改札を出た筆者を迎えてくれたのは、台風一過の影響で朝からカラリと晴れ渡った原宿の町並みでした。雲ひとつ無い青空は、まるでこれから目にする、耳にする幸せを予見しているかのよう。
時間は午前九時過ぎ。エンジンには火が灯ったばかりなのか、まだまだ人の流れは少なく、一見すれば原宿らしからぬ様相です。一方で、しかし確かにここが若者の街だと認識させられる”若者な”ファッションの男女を目にすると、どうしても目で追ってしまうのが田舎者の性というもの。
待ち合わせの時間は午前十時。
記憶を頼りに会場である原宿ストロボカフェの場所を確認しつつ、駅近くのコーヒーショップに足を運びました。鞄には何も書かれていない真っ白な一冊の本を、手には抱えきれない不安を抱きながら、静かにその時を待ちます。
長い長い一日が、ここから始まります。
この声が届く日~nayuta solo live 11th Anniversary & Birthday Event~ とは
昨年、節目の10週年を迎え、メモリアルアルバム「この声が届きますように」を制作したnayutaさん。
そして今年は11周年、自分の声を直接届けたい!(公式HPより一部抜粋)
そんなnayutaさんの想いから出来た初ワンマンライブ、それが「この声が届く日」というライブイベントです。
ライブは一部、二部制となっており、一部はカラオケ音源メイン、二部はバンド隊(荻原和音[Solitaire]さん、藤屋[Solitaire]さん、村上海人さん)を迎えたアコースティック編成という構成。
そして一部、二部を通してゲストに2018年春M3新譜「サクラドライヴ」でコラボしためらみぽっぷさんを迎えるという、まさに歌ってみた厨歓喜のイベントとなりました。
チケットは即日完売という嬉しい誤算に見舞われるなど、nayutaさんにとってもファンにとっても当日が待ち遠しい、それが「この声が届く日」
最大多数が一番簡単に参加でき、かつ最大多数が幸せになれる方法
チケットを取ったのは遡ること4ヶ月前のこと。
無事にチケットを取れた安堵感に続いて、筆者の中には小さな野望の火種が生まれました。
「人生で一度きりのワンマンライブ、なにかサプライズを催したい」
サプライズ、と言うのは簡単なことです。しかし、どんなサプライズを企画するのが正解で、そのためには一体何を準備し、どこで何を呼びかければ良いのか。
足を踏み出すべき眼前の道すらままならない状態で、筆者はしばらく考え込みました。
そして、自分の中で一つの約束事を作りました。
それは、「最大多数が一番簡単に参加でき、かつ最大多数が幸せになれる方法」で企画を行うこと。
nayutaさんは、これからもきっとたくさんのライブに出ることでしょう。しかし、はじめてのワンマンライブは、もう二度とやってこない。
そんな特別な場所に来ることが出来る参加者が、一人でも多く参加できる企画、そしてnayutaさんはもちろん、参加した人みんなが幸せになれる企画。あわよくば、数年後、あるいは歌い手活動を辞めた彼女がある日、ふと振り返って「初めてのワンマンライブでこんなことがあったな」と思い出せるような…
そんな企画にしたい。それだけはぶれないように、筆者は再び長い思考の海へと身をやつしていきました。
そうして幾つかの企画案を立ち上げ、検討を重ね、最終的に出来上がったのが「メッセージブック企画」でした。
何も書いていない一冊の本。
本のタイトルは、ライブにちなんで「この声を届けたい」としました。
「参加者には1ページ使って自由に思いの丈をぶつけてもらう」というなんともシンプルで、なんとも参加者任せな企画。
どれほど参加してくれるかわからない、受け入れられるかもわからない。
不安要素は山ほどある。でも、それ以上に今の自分が考えられる最高の企画ができたと思いました。
企画の骨子が出来てしまえば、そこから先は早かったです。あっという間に準備は終わり、気づけばライブ当日を迎えます。
一つ懸案事項があるとすれば、これが「正解」なのか自分にはわからなかったこと。
何者なのかもわからない人間の企画に、果たして参加してくれるのだろうかという不安。
果たしてこれは自分が掲げていた「最大多数が一番簡単に参加でき、かつ最大多数が幸せになれる方法」として正解なのかという疑念。
そんな様々な思いを胸に秘めながらコーヒーショップでスマホを開くと、何やら見慣れぬフォローの通知が。
それは――筆者にとって思いがけない助け舟となります。
正直、色紙というアイディアは立案段階で最後まで残ってた
”この声が届く日:企画用”という名前のTwitterアカウント、ツイートの内容を見れば、どうやら色紙プレゼント企画を考えているようでした。
筆者の中に「良かった、仲間がいた!」という安堵の気持ちと、「しまった、企画被りだ!」という戦慄が迸りました。
とりあえず色紙企画には興味があったのでフォローリクエストの送信と参加表明のメッセージを送りました。そして待ち合わせの時間となり、ケイティ守口氏と合流。聞けば、件のアカウントにはケイティ氏も接触していたことを知り、せっかくだからとアカウントの主をこの場へ読むことにしました。
ケイティ氏とつもる話をしたり、お土産を渡したりしながら待つこと数分。筆者は”この声が届く日:企画用”こともちゆう氏と合流しました。簡単な自己紹介を済ませいよいよ本題、互いの企画に関する情報交換を行いました。
初対面の人に向かって自分の企画を短く、わかりやすく伝えるという行為。試されるは己のプレゼン力。仕事でもここまで精力的に取り組むことはない程に力を入れて作った企画書をもとに、必死になって説明しました。伝えるのは言葉じゃなくて、己の思い。「この声を届けたい」という本のタイトルは筆者の心の叫びみたいなものでした(今考えた)。
結果的にもちゆう氏は快く企画に参加してくれました。
――手応えは掴んだ。
――よかった、nayutaファンは受け入れてくれる!
率直に嬉しかったです。
そして気持ちは自信となり、一日を通してたくさんの人の「声」を集めることが出来ました。
「ぜひ書かせて下さい」「私も書いていいですか」「なんて書こうかなー」参加者の生の声をたくさん聞きました。
十年戦士も新参者も関係ない。そこに集まったのは、ただひたすらにnayutaさんの歌が好きで、nayutaさんに届けたい「声」を持っている仲間ばかりでした。
初めて会ったにもかかわらず、話を投げればちゃんと受け取って、しっかりと投げ返してくれました。
参加者の皆さんの「声」を聞くのがとても楽しくて、とても幸せでした。
それは、主催の特権ということで許してやって下さい。
そして色とりどりの「声」は一冊の本となり、無事にnayutaさんの手元へと渡っていきました。
いろんな偶然や取り計らいのおかげで、直接御本人にお渡しできたこと、10年分には全然満たないまでも感謝の言葉を伝えられたこと、とても幸運でした。
「声」を文字に乗せて送るということ
ワンマンライブ参加者、それも1時間と経たず完売したある意味伝説のチケット争奪戦に勝ち上がってきたガチ勢ばかりが集まるライブです。
みんなnayutaさんに伝えたいことがあるに違いない。
思い思いに伝えたいことがあって、でも、手紙に書くって実はすごくハードルが高い事で。
そのハードルを少しでも下げられたら。自分が率先してハードルを下からくぐって見せたら、みんな真似してくれるんじゃないか。
そういう思いから生まれた企画でした。
そんな思いが伝わったかどうか、この企画が「正解」だったかは未だにわかりません。
ただ、この企画に参加して少しでも良かったなと思って貰えたら、それで筆者は幸せです。参加者の皆様、本当にありがとうございました。