大満足です
突然の夕立
昨日の続きです。
光塾 COMMON CONTACTを出て駅へ向かおうとする筆者の顔に、ぽつりと冷たいものが当たりました。空を見上げれば、ほとんど雲のない青空がこちらを見下ろしています。
「どこかで狐が結婚式でも挙げてるのね」
それくらいお手本のような天気雨。と言っても雨量自体は僅かなもので、気にするほどのことでもありません。ジメッとした空気と一緒に駅へ入り、電車に乗って一息ついてTwitterを開くと、
“めっちゃ雨降ってきた”
“夕立で服ずぶ濡れなんだけど”
“外出た瞬間終わったわ”
阿鼻叫喚の嵐が。まじか、渋谷は前述の通り気にならない程度の天気雨でしたから、びっくりでしたね。
そうこうする間に電車が神保町に着きました。駅を出てすぐのビルの5階が、今回の会場のらくごカフェさんです。
ネタ出しと解説と、そして爆笑と
真田小僧 桂空治
開口一番は弟子の空治さん。こうやって前座として師匠の会に入るのもだんだん少なくなってくると思うと、嬉しいような物寂しいような。
熱中症明けで大変そうなご様子でしたが、それでもキッチリと真田小僧を演りきってましたね。最近よくこの噺をかけてる気がするんですが、表情豊かで小憎たらしい子どもの様子がよく描けていて好きですね。
千両みかん 桂文治
文治師匠の会は、いつも師弟の喧嘩のマクラから入ります。噺家の師弟関係としてこんなのありますか? ってくらいハチャメチャと言うか見る人が見たら卒倒するんじゃないかってレベルの関係性なんですが、それも全部親子愛なんでしょう。
千両みかん、寄席でかける人もなかなか居ないし、文治師匠が演ってるのも初めて見るくらいの珍しい根田でした。入りが擬宝珠や崇徳院と同じなんですね。みかんを探しながら主殺しに怯える番頭さんの様子が見ていて大変面白かったです。それくらいの恐怖があったからなんでしょうなぁ、あのサゲがすごくしっくり来るのは。
ちなみに、帰りにスーパーへ寄ってみかんを探したら一口サイズかな? ってみかんが4、5個入って500円というなかなかの値段で売ってたのでそっとスルーしました。
小言念仏 桂文治
仲入りを挟んで、高座に上がったのは文治師匠でした。なんだかんだ言って弟子のことを気遣ってくれる姿がとても粋です。
小言念仏、芸協だと当代の春風亭柳橋師匠がよく寄席で演っているイメージが強いんですが(浅草で5日連続かけてた話聞いて笑ってました)、文治師匠も持ってたんだなあとチラシ見ながら思ったものです。そして高座を見て思いました、こりゃあ師匠に合ってると。落語なんだけどどこか懐かしいコントのような、定点カメラでずっと物語が進んでいく構成。お婆さんがいて赤ん坊がいて、途中でドジョウ屋がきて……信心があるんだかないんだかわからないお爺さんの様子が滑稽でずっと笑いっぱなしでした。
代書屋 桂文治
高座に上がれない空治さんに代わって師匠が三席目です。こういう時にサッと演れる根多が多くあるのは、さすがずっと寄席に入り続けてる師匠ですね。
LITさん、文治師匠の代書屋が好きなんですよね。なんだよでれきしょって。代書屋じゃなくても小言いいたくなるくらいインパクト強いキャラが出てきます。自分の名前もロクに言えない、「生年月日を大きな声でどうぞ」と言われて大声で「生年月日!」と答える、とにかくハチャメチャなやりとりが実に滑稽で、実に落語らしい快作です。
今日の回は、終わってからそれぞれの噺の解説が入りました。解説を聞くと、より理解が深まります。千両みかんでは金銭感覚が狂ってしまった番頭さんのこと、そしてそのまま終わっていくという落語らしいサゲのことを聞いてなるほどなぁと感心しましたね。講釈だったらこれが番頭のその後を描くのですが、落語はこれで終い。そんな違いも言語化するとよくわかるものです。
小言念仏についても、木魚のリズムを客の雰囲気に合わせて変えていると聞いて驚きました。もっと驚いたのは晩年この根多をずっと得意にしていた小三治師匠のこと。まぁ、これは会に来た人だけの特典でしょう。
つくづくこういう解説を聞いていて思うのは、時代を経ても落語っていうのは結局人間の業の肯定なのだという、立川談志師匠の言葉の確認作業なんだなぁということですね。大変素晴らしい会でした。またお邪魔いたします。
最後は写真タイム。いよいよ京都にも拠点を構える準備も進んでいるご様子です。楽しい大阪の旅になりますように。