ゆたんぽを抱いて寝る。

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2023.3.8 ノラや「雛菊勉強会vol.5」

何度見ても面白いポスター(前座時代の宣材写真だよね?)

 

ネタおろしの会です

ネタおろし。噺家にとって緊張する高座のひとつでしょう。

初めてお客様の前でネタをかけることを、落語用語でネタおろしと言います。習った師匠に認めてもらい、初めてお客様の前で演じるという、正真正銘の第一発目。ウケなかったらどうしよう、ネタが飛んだらどうしよう。いろんな心配が頭をよぎることでしょう。

そんなネタおろしの会に行ってきました。場所は、先月雛菊・菊之丞親子会をやったノラやさんです。

もはや平日の恒例となった退勤ダッシュからの駅からダッシュノラやさんに向かいました。いやはや、毎度ながら間に合って本当に良かった。

 

久々にいい「子は鎹」を見た

今日は前半に1席やって仲入り、そしてネタおろしという構成です。

そして今回のネタおろしは、チラシにもある通り「子別れ」あるいは「子は鎹」という人情噺です。当然ながら、人情噺は二ツ目にならないとできないネタの1つ。持ちネタに人情噺が入ると、一気に噺家として成長してきたなという感じがします。「子別れ」は立派にトリが取れるネタ。さて、その仕上がりはどうでしょうか……

 

錦明竹 雛菊

珍しく落ち着いた着物に黒の羽織姿で高座に上がった雛菊さん。普段は桜色の紋付きに袴スタイルが多いので、なんだか新鮮でしたね。もはや定番になりつつある、自分の会だからと好き勝手しゃべり倒す楽しいマクラに続いてかけたのは、錦明竹。そういえばこの間の雛祭りで前座の鈴々舎美馬さんが演ってましたね。

言い立てはもちろんのこと、上方訛り(関西弁)が上手く出来るかとか言い立ての緩急とか、前座噺なんですが突き詰めていくと面白さがどんどん増していくのが錦明竹の楽しいところです。個人的に今日の錦明竹は今までで一番だった気がします。登場人物の会話がすごく自然体で、それでいてしっかりと場面が背景に見えてくる。

覚えた噺をただかける、というのではなく、しっかりと自分のものにしていく。とてもいい錦明竹でした。

 

子は鎹 雛菊

仲入りを挟んで、いよいよ今日の本題の「子は鎹」です。

腕は良いが酒癖が悪い大工の熊五郎。数年前におかみさんと息子に出ていかれ、代わりに女郎を身請けするもその女にも出ていかれてしまう。心を入れ替えて仕事に励むようになった熊五郎が、番頭さんと一緒に木場へ向かう途中にバッタリと息子の亀吉に出くわして……という噺なんですが、普段明るくて陽気な落語でお客さんを笑わせてくる雛菊さんがどんな人情噺を演るのか、非常に楽しみでした。

率直な感想ですが……これはね、良かった。ちょっとうるっと来ちゃうくらいに良かった。当然、ネタおろしなので荒削りな部分はたくさんあります。セリフや言い回しがちょっとずつ稽古したものと違っていたり、探り探りな部分があったりもしました。でも、そんなことは全く些末なことで。

雛菊さんの演る亀ちゃんがねぇ、本当に良かった。子どもが出てくる噺にハマってるなとは前々から思っていたんですが、まさかこれほどとは。両親を心配させまいとちょっと大人びた態度をとりながらも、ふとした瞬間に年相応の子供っぽく泣いたり笑ったりする亀ちゃんが、見事に完成されていました。この噺を教えてくださった雲助からも「泣かせようとしてなくていい」と褒められたそうですが、本当にその通りで。ややもすれば人情噺って泣かせようとしてクサい演技になりがちなんですが、亀ちゃんも熊五郎もお光さんもみんな自然体なんですよね。だからこそ、見る側にストレートに伝わってくる。ネタおろしでこれが出てくるんだから、末はどうなるか本当に楽しみです。

あと、台本がめっっっちゃ良かった。芝浜もそうなんですが、雲助師匠ベースの人情噺はどれも登場人物がすごく人間味にあふれていてそれでいてあったかいんです。番頭さんが最初から全部わかってて亀ちゃん達が遊んでるところに案内してくれたり、再会のシーンで熊五郎がハッキリと「いつかちゃんと迎えに行く」って言ってくれたり。こういう人のあったかさが台本にキチンと起こしてあるからこそ、いろんなセリフがしっかりと生きてくるんだろうなと、そう思いました。

 

どんどんネタが増えていくのが楽しみ

雛菊さんは「この会は毎回ネタおろしに挑戦したい」と意気込んでいました。二ツ目のうちにどんどん大ネタを増やして、いずれ真打になった時にどんな披露目をするのか。気が早いとは思いますが、そういう日が待ち遠しくもあります。

 

次は妾馬かなー、いやぁ、楽しみですね!(演るとは言ってない)

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