ゆたんぽを抱いて寝る。

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読書記「スパイ教室09 《我楽多》のアネット」竹町/トマリ(富士見ファンタジア文庫)

あの双子も良かったッスね……

 

第三部 開始です

――世界は痛みに満ちている。

世界大戦と呼ばれる歴史最大の戦争が集結して、十年。戦禍の惨状を目の当たりにした政治家は、軍事力ではなくスパイにより他国を制圧するような施策の舵をとっていた。

(本編より抜粋)

 

 

1~4巻までを第一部、5~8巻までを第二部とするならば、9巻である本作からはいよいよ第三部が始まります。第二部までで大きな成長を遂げながら、全員で任務を乗り切ってきた「灯」の少女七人、もとい八人。

「鳳」という戦友と過ごした濃密な日々を胸に懐きながら、「灯」とクラウスは新たな任務へと向かっていきます。本作は、その序章的な存在。今作も非常に極上な物語に仕上がっていました。

 

新規読者にも優しい、改めての説明回

ビーチが美しい観光地へとやってきた「灯」一行。クラウスに与えられたルールを元に各々が休暇を過ごし、最終日前日となる13日目、その夜のことでした。

アネットが居ない。

《忘我》のアネットが、まさかの行方不明。彼女の足跡をたどるべく、灯の少女たちはそれぞれが過ごした13日を語っていきます。つまるところ、改めましてのキャラ紹介です。

 

今作、ノリとしては非常に軽い――ややもすればドラマガ連載の短編を彷彿とさせるような、軽快でギャグ要素が多い仕上がりとなっています。だからこそ、各キャラの性格や関係性が非常に掴みやすい。

中でも、やっぱり笑っちゃうのが《夢語》のティアでしょう。

軍人が入り浸る酒場で男を次々に篭絡しては貢がせるっていう、もうほんとティアらしい暴れっぷり。まじでこの魔性の女は……って感じでゲラゲラ笑いながら、心霊現象的な要素に滅法弱いっていう一面もちょっとかわいくて好きになっちゃいそうでした。

それと、本作でガラッと印象が変わったのが《氷刃》改め《灰燼》のモニカでしょう。第二部では、それはもう印象的な役割を果たした彼女ですが、今作では下手すれば短編以上にはっちゃけ倒しててまじで愛おしくなりました。いやはや、これも彼女の成長の証なのでしょうね。恋愛事情に関しては「現状維持」ということらしいですが、さて今後彼女達の関係がどうなっていくのやら。楽しみでなりません。

 

恋愛と言えば――そうですね、やっぱり《愛娘》のグレーテとクラウスの関係については本作の見どころの1つだったように思います。序盤からクラウスに対する恋愛感情をオープンにしていたグレーテですが、本作ではついに……という展開があったとかなかったとか。

それに対してクラウスがどう応えるか。このあたりはグレーテもそうですが、クラウス自身の心境の変化や「灯」に対する気持ちや1人の人間としての成長をすごく感じる場面で、個人的にグッと来ちゃいましたね。

 

新たな任務に挑む「灯」が少しだけ見られるエピローグ

それから1年の時が経ち。ライラット王国のとある都市に潜入しているのは、《愚人》のエルナでした。留学生という設定でとある学校に潜入しているんですが、ロングヘアーをバッサリと切り落とし、語尾の「……の」を封印してちょっと大人っぽくなったエルナに、思わずドキッとしたのは筆者だけではないはず。

と、同時に若干の不安もあったりなかったり。エルナは元々不幸体質という名の過剰なまでの自罰体質が不幸あるいは殺気、敵意に対する敏感さを底上げして特技にまで発展させていたタイプ。徐々に薄れていってるような描写があり、少しだけ今後の展開が不安ではありますが……しかしそこは、共に行動するアネットが上手くカバーしてくれてて安心です。

っていうかこの二人がペアなんだなと。エルナがアネットとペアで行動するってだけでそれはもう成長を感じるわけですが(主にエルナの)、アネットがねぇ……まじで「こう化けるのか」という感じです。

「灯」イチぶっ壊れてるのは間違いなくアネットですが、いやはや第二部で裏切ったモニカに惨敗してからどう立ち直ったのかと思っていたら、まさか「自分じゃ勝てないから自分以外の人間に人を殺させる」というタイプの天才になっていたとは。元々持ち合わせていた天才的な兵器開発技術を掛け合わせ、路地裏の浮浪者を操りライラット王国の精鋭部隊を返り討ちにするっていうあの場面はまじで鳥肌モノでした。

 

《暁闇計画》、世界恐慌、第二次大戦……第三部はこのあたりのキーワードが中心になってきそうです。世界の運命に巻き込まれながらも活躍していくであろう「灯」に益々注目です。

 

アニメも極上に出来てて満足です

1月からいよいよアニメが始まりましたね。

spyroom-anime.com

この記事を書いている時点で筆者は第3話まで(原作1巻相当)見たんですが、いやぁ実に極上に作っててくれます。キャラの造形はしっかりしてるし、原作で大事な部分をしっかりと上手くアニメの脚本に落とし込んで映像化してくれていて、さすがそのあたりはFeel制作だなと。

個人的にグッと来たのは、1話のこの場面。

作画ミスなのか狙ってやったのか、おそらく後者だと思うんですが、椅子が8脚あるんですよね。当然クラウスが少女たちと同席するってことはないでしょうし、そうなると残り1脚はやっぱり……そういうことですよね?

この何気ない1カットを見た時点で「あぁちゃんと作ってくれてる」ということと原作1巻における「一流のスパイたるもの、敵はもちろん味方も、読者さえも騙せ」っていうあの気概をしっかりアニメで感じたような気がしました。

4話以降も極上の物語が見られることを楽しみにしています。個人的には、ティアと《紅炉》さんのやりとりが最高に好きなのとアネットがある意味大活躍する3巻のストーリーが死ぬほど好きなので是非そこをアニメに作って欲しいなと願います。

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