受賞作品は今でもちょこちょこ買って読んでます
作家になる未来はこのあたりで棄てた
ファンタジア大賞。かつてはファンタジア長編大賞という名を冠していた、ラノベの歴史を語る上で避けては通れないあまりに大きな賞レースです。
出身作家は第一回準大賞の神坂一先生（スレイヤーズ）を始め、榊一郎先生（ドラゴンズ・ウィル）、竹町先生（スパイ教室）など挙げ出したらキリがありません。
そんな、ある年。ドラゴンマガジン上に「大賞受賞！」の文字が躍りました。この頃は年一回の開催で、長いこと大賞が出ていなかったんです。その作品こそ、後にアニメ化までされる大ヒットを記録した「神さまのいない日曜日」（以下「神ない」）でした。
可愛らしいイラストに、設定だけ見ると魅力的な世界観、なによりずっと出てなかった大賞受賞作という大看板。飛びつくように本屋で買って、そのまま一気に読み切り――1巻で買うのを辞めました。理由はシンプルで、ちっとも面白くなかったんです。主人公の行動理由も敵対キャラとの関係性も、どれをとっても自分にハマらなかった。解釈違いもここまでいくと身勝手な怒りに変わるもので、当時書いていたウェブ上の日記で散々こき下ろした記憶があります。我ながら勝手なことやってた自覚はあるんですが、それまで買っていた賞レース受賞作品が（それこそ単発打ち切りだったとしても）そこそこ面白かっただけに、まじでショックが大きかった。
筆者のファンタジア大賞「大賞」受賞作アレルギーのようなものは、ここから長いこと続きます。ついでに言うと、こんなの売れるわけがないと思っていた件の作品が売れに売れてアニメまで大ヒットしたものだから、将来小説を賞レースに出すにしても富士見で通ることはないなと、これまたありもしない妄想を勝手に吐き出したものです。
自分への挑戦です
あれから十数年。「神ない」は勿論その後特に追いかけなかったし作者がどうなったかも気に留めませんでした。
この間、最寄り駅の本屋にふらっと立ち寄った時のこと。平積みされている本をダラっと眺めていたら、目に留まってしまったし足も止めてしまいました。
「蜘蛛と制服」作者は入江君人先生。そう、「神ない」の入江君人先生です。もう何年も、それこそ10年近く名前を見ていなかった気がします。まだ作家やってたのか、というのが１番の感想でした。後日、本人がブログでスランプの告白をして話題になっていたのを知るわけですが、この時はまだちっとも知りませんでした。
ただ、この時ふと思ったんですよ。
今だったら読めるのでは？
当時はまだまだ凝り固まった厄介なラノベオタクだった筆者も、今ではすっかり丸くなったつもりです。そんな今なら、入江君人作品もすんなり読めるのでは？ 作品に対する向き合い方も、きっとこの十数年で変わってきたに違いない。そう思ったときには、既に会計が終わっていました。
「神ない」から十数年、当時の自分と戦う意味も込めて、これから読んでいこうと思います。感想記事は、上がるかもしれないし上がらないかもしれません。
