ゆたんぽを抱いて寝る。

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猫のこと、本のこと、アニメのこと、野球のことetc...思いついたまま、気の向くままに。

ゆたんぽを抱いて寝る。

時間が経ったのでブチギレするほど面白かったのに消えてしまったラノベ作家の話をします

実質続きものです

 

平成のデスブログこと……いや、それは本家や

ファンタジア大賞。かつてはファンタジア長編大賞という名を冠していた、ラノベの歴史を語る上で避けては通れないあまりに大きな賞レースです。

出身作家は第一回準大賞の神坂一先生(スレイヤーズ)を始め、榊一郎先生(ドラゴンズ・ウィル)、竹町先生(スパイ教室)など挙げ出したらキリがありません。

そんな、ある年。ドラゴンマガジン上に「大賞受賞!」の文字が躍りました。この年代は今までから様相も変わり、大賞もそこまで渋くなかった気がします。それでも筆者には以前発症した大賞アレルギーがあり、そのせいで買うのを少しためらった作品になります。

作者は弱冠二十歳前後の若者と聞いたのはあとになってからですが、たまには売れ線を知っておくのも悪くない。売れ線というのはつまり、賞レースのトップであるという理論でもって手に取ったわけです。

イラストも今風に美麗で、必要以上に萌えに振り切ってない。正統派ファンタジーの香りがする作品を、例によって一気に読み切りました。余談ですが、筆者は裏表紙のあらすじを読まない派です。全部読んで、ラストの展開にボロボロと涙を流している自分がいました。本を読んであー楽しかった、と満足感を得ることがあっても、泣きながら読むことはなかなかありません。美しくもどこか儚い風景描写、描き出される等身大の少年と少女の物語の行く末、どれもが琴線に触れるどころか琴線をかき鳴らすほどの衝撃でした。

1巻を皮切りに数ヶ月ペースで刊行を続け、そのどれもが本当に読んでいて満足感たっぷりな作品でした。最後も綺麗にまとまっていたし、今後も新しい作品を手にできるものだと思っていました。

しかし、その日が来ることは1年経っても2年経っても、5年経ってもありませんでした。ネットで検索しても、足取りは全くわからず。こうして無事「消えた作家」の仲間入りです。

 

作者の名前は武葉コウ、作品名は「再生のパラダイムシフト」

 

過去の自分への報告です

個人的には大ヒット作だっただけに、この程度で終わってしまうのが本当に寂しい気持ちでした(再生の〜自体は綺麗に終わってましたが)。それよりも更にブチギレたのが、どこぞのマニアだか評論家だかが書いたレビューです。やれ「大賞取るような出来じゃない」だの「最終巻が1番駄作」だのまあ好き勝手言ってくれるじゃありませんか。でも実際その後メディアミックスすることもなければ、実際作家として新作も出なかったわけで。

このあたりの年代は、筆者の中のデスブログみが強くなってた時期でもあります。とにかくTwitterで褒めたら打ち切り、絶賛したら作家が消えるというのが続いていました(今も)。そういうのもあって、これはいよいよ世間の売れ線と筆者の面白いは随分かけ離れているのだなと、そう痛感させられました。

 

そして時は流れ、1巻発売から10年が過ぎた今年のとある日のこと。本屋に立ち寄ると、富士見ファンタジア文庫コーナーに平積みされた作品の一つが目に留まります。

タイトルは「スパイ≒アカデミー」

 

正直、二番煎じ巻が強すぎて手に取る気にはなれませんでした。いや、どう考えてもスパイ教室の二匹目のドジョウでしょ、と。それをよもや同一レーベルでやるなんて。帯の推薦文も竹町先生に書いて貰うっていうあからさまな持ち上げぶり。富士見もそこまで堕ちたかと静かにブチギレながらスルーしようとして……えっ?

思わず二度見しました。作者、武葉コウ? 待って待って、ホントに武葉コウ先生? 10年近く音沙汰なしで、いきなり新作ってそんなことある????

さっき散々言ったくせに、そんなこと無かったかの如く本を引っ掴んでレジに叩きつけました。まだ中身は読んでないし、思ったほどの出来じゃないかもしれない。でも、そんなことはどうだっていい重要じゃない。これは、ただの報告です。10年前に再生のパラダイムシフト1巻を読みながらボロボロに泣いていた自分への、新作がいつまでも出ずあの人は今リストに入れていた自分への、報告です。

武葉コウ先生の新作が2023年夏に出たよ!

感想記事は例によって出るかもしれないし出ないかもしれません。

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