大盛りあがりで楽しい会でした
あれから1年が経ちました
去年ばばん場で開催された古今亭雛菊さん主催の「雛祭」
「来年は日曜日! みんなスケジュール空けといてね!」という言葉どおり、きっちりスケジュールを空けて待っていました。前回は、今や人間国宝に認定された五街道雲助師匠を呼び、今回は入船亭扇遊師匠を呼ぶという。本当に二ツ目で呼べる人材じゃないんですが、そこはやっぱり雛菊さんの性格と人望に依るものなのかもしれませんね。
結論から言うと大変楽しい会でしたので、記録と共に記憶を共有出来ればこれ幸いにございます。
笑いの絶えない、あったかい会でした
黄金の大黒 入船亭扇ぱい
このあと高座に上がる入船亭扇遊師匠の4番弟子の扇ぱいさん。雛菊さんにとっては後輩なのに”せんぱい”とはこれ如何に。なんて思いながら聞いていましたが、よく通る良い声の持ち主で。噺の方も「黄金の大黒」をキッチリ演りきって、笑いもしっかりととっていく。登場人物が多いわちゃわちゃとした噺なんですが、テンポはいいし笑いどころはしっかり抑えてる。上手いなぁと思って後から調べたら、今年の5月下席から二ツ目昇進でしたか。いやはや、これは有望な二ツ目が誕生の予感です。
二階ぞめき 古今亭雛菊
今日はおはやしも生演奏。田村かよ師匠に来ていただき、自分の出囃子「証城寺の狸囃子」を演奏していただいて高座に上がる。これだけで本当に豪華な会だなというのがわかります。もうね、高座に上がった瞬間から楽しそう。ニコニコしっぱなしで、本当に楽しみにしてたんだろうなというのが客席まで伝わってきます。
一席目は「二階ぞめき」古今亭と言えば廓噺、という強い気持ちを感じる一席目ですね。店の二階に吉原を作るとかいうぶっ飛んだ設定の噺なんですが、蓋を開けてみれば途中で鬼滅ネタが入るという設定に負けないぶっ飛んだくすぐりが入るものだから、もう見ていてゲラゲラと笑いっぱなしでした。手ぬぐいを禰豆子のアレに見立てて咥えた噺家が果たしてどれほどいるのか。
厩火事 入船亭扇遊
いやぁ……ばばん場に扇遊師匠ですよ!(去年も同じようなこと書いてた)
寄席ではもちろん何度も拝見している、実力はそれはもう筆者なんぞが語るまでもない程の大ベテランの師匠でございます。そんな扇遊師匠をこんな間近で見られて筆者も感無量です。
かけた根田は、厩火事。畳み掛けるような笑いの連続に、本当にお腹痛くなるくらい笑いました。やっぱりね、名人の高座ってすげぇなって思わされますよね。間の取り方といい、話のテンポといい、お崎が愚痴ってるんだか惚気てるんだかわからない様子の描写とか、とにかく全てが楽しい。若手のゲストだからといって決して手を抜くことなく、こういう根田を演ってくれるところも素敵な師匠でしたね。
紙切り 林家八楽
1月に急逝された林家正楽師匠の代演で上がったのは、先代正楽師匠の孫弟子の八楽さん。紙切りという芸はいつ見ても本当に楽しくてワッと驚かされる物が多くて、見ていて本当に楽しい高座でした。
今日のお題は「正楽師匠との思い出」「雛祭り」「雛菊姉さん打上げで一杯」「暴れん坊将軍」の4つ。どれも素敵な仕上がりだし話もしっかりと面白いしで、メキメキと実力が付いてるんだなぁというのがよくわかります。その中で印象的だったのは、1つ目の「正楽師匠との思い出」。やっぱり怖い師匠だったようでずいぶんと怖い思い出やそれをネタにした面白エピソードは多く出てきたわけですが、それでも出来上がったのが「袖から見ていた正楽師匠」という構図なのがもうね、泣けてきちゃいますよね。最後見せ終わってぽそっと「もっと小言貰いたかったな」と漏らしたのがずっと頭の中でリフレインしてます。改めて、正楽師匠の御冥福をお祈り申し上げます。合掌。
佐々木政談 古今亭雛菊
ネタおろしから随分とパワーアップしたように思える、雛菊さんの佐々木政談。子どもの出てくる噺はやっぱり雛菊さんに合ってるような気がしますね。お奉行ごっこしてる時の様子はリアリティがどんどん増してる気がするし、聡い一面と子供らしい一面が交互に描かれている様が見事でした。
表情豊かなのもまた、雛菊さんの高座の魅力の一つだと思います。滑稽噺は滑稽噺らしく、人情噺は人情噺らしく。それでいて、決して臭くない演技なのもまたいいのかもしれませんね。佐々木政談なんかはまさにそうで、四郎吉が等身大の子供として描かれているからこそ、あの頓智頓才が効いてくるわけです。いい佐々木政談でした。
来年は流石に平日ってことはないだろうけれども
来年の3月3日は残念ながら平日。流石に平日に演るってことはない……と信じたいですが、そうなったらもう有給幻想曲ですよなぜ君と出逢えたのですよえぇ。来年のことは今からどうなるかわかりませんが、きっと楽しい会になるだろうと信じてそれまで生き長らえたいものですね。