ゆたんぽを抱いて寝る。

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【読書記】「夏目漱石ファンタジア」が設定モリモリでバチクソに尖ってるのにちゃんと面白かった

楽しいハチャメチャでした

 

大賞受賞作品です

ファンタジア大賞。筆者のような老害おじさんには「ファンタジア“長編”大賞」と言ったほうが、あるいは馴染み深い人間もいるかもしれません。

スレイヤーズ」を祖に持ち、今なお「スパイ教室」のような大ヒット作品を生み出し続けている賞レースで見事大賞に輝いた本作「夏目漱石ファンタジア」ですが、ざっくりあらすじを書くと、

 

殺された夏目漱石野口英世の手によって脳移植されて樋口一葉の身体を得て、自分を殺した犯人を探していく物語

 

こうなります。いや、ふざけてるわけじゃなく、ほんとに、まじで。性転換とか流行りの転生モノとかじゃなく、まじのガチでこういう物語です。そんなぶっ飛んだ設定なくせにちゃんと面白かったのだから、やっぱりラノベっておもしれーなと思ったわけです。

次の章では、もう少し詳しく感想を書いていきましょう。

 

史実と虚構の程よいミックス具合が面白さを形成している

本作には夏目漱石以外にも野口英世芥川龍之介高浜虚子など近代文学史における重要人物が何人も登場します。その誰もが、いい具合に「史実と虚構がミックスされている」のが本作の特徴であり、見事な手法だなと感じています。

『木曜会』という組織は実在するし実際そこに芥川らが参加しているという史実に基づく人件関係はそのままに、『木曜会』を唯の創作集団から自由主義を守るための武装組織にしてしまう。野口英世はたしかに手に火傷を負っていたけれど、貧困にあえいで金に目がくらんだわけではない。この史実と虚構を程よく織り交ぜながらラノベとして物語を構成しきった実力は、たしかに大賞受賞作に相応しいそれでした。

文学史に明るい人ならクスッと笑える設定の活かし方だし、明るくない人でもラノベとしてしっかり楽しめる。このバランスが本当に凄いなと思わせてくれる、そんな作品でした。

 

軽快なテンポで進行する、読みやすくそれでいてしっかりと面白い物語

本作は、非常に速いペースで物語が進行していくと感じたわけですが、それが非常に読みやすく、だからといって決して薄味ではないというのが良かったなと。必要な情報提供や描写だけはしっかりと行い、掛け合いによる小さな笑いも忘れない。このバランスは凄いなと舌を巻くほどでした。

当然ラノベとしての、エンタメ小説としてのあれこれもふんだんに散りばめられていて、中でも最終戦は展開といい設定といい、なかなかどうして目を見張るものがありました。史実ありきで書いているのでぶっ飛びすぎた設定はあまりないですが(漱石が一葉の身体に入ってるって時点で相当ぶっ飛んではいます)、その設定をうまく活かしつつエンタメ作品として作り上げた作者の零余子先生はまじですげぇ。

そんな(おそらく)唯一無二の奇作にして快作に触れたいというひとは、ぜひお近くの本屋へ。終わり方を見るに、続刊もあるのかも……?

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