左利き用ハサミ
これも個性なのかあるいは
皆さんは、右利き左利きどちらですか? あるいは両利きなんて人もいるとかいないとか言いますが、筆者は全ての動作において右利きです。
箸を持つのも右、ボールを投げるのも右、混雑した電車の中で前の人の財布をそっと抜き取るのも――いやいや、それはどっちの手でもやらないから。
「僕らの世代は、みんな右利きに直されたんだよね」
同僚と話していたら、還暦近い社員さんがそんなことを言いながら会話に加わってきました。そういえばそんな事があったらしい話を、ずいぶん昔に親から聞かされたことを思い出します。
今だったらクソほど炎上しそうなエピソードですが、日本人の生活が右利き用に構築されているから仕方のないことなのです。ドアノブは右手側に付いてるし、鋏もデフォは右利き用に出来ています。毛筆なんてのは最たる例ですしね。
ないものねだりかもしれませんが、子供の頃は無駄に左利きに憧れたものです。クラスでも少数派だったし、無駄にかっこいいと思っていた時期が、人間どこかで一度は訪れるんじゃないでしょうか。
「で、食べ物ボロボロこぼして親に怒られるまでがセット」
同僚が言います。本当にそれです。同僚は続けて
「まぁ、私の場合は書類の偽造やるのに左手で書きまくってたら左手の字も上手くなったんですけどね」
そう言って、部屋を出ていきました。
…………えっ?
マルチ利き手が一番かっこいいまである
「村上くん(仮名・村上宗隆に顔が似ているが野球経験ゼロ)は利き手どっち?」
対面に座っている後輩に話を振ると、彼はキーボードを打つ手を止めて、
「オレは左ッスね」
そう答えました。
「鉛筆持つのもボール投げるのも全部左?」
「箸を持つのと彼女の手を握るのだけは右ッス」
「きみ、彼女いたの?」
「未来の話ッスよ」
そうか、世の中には部分的に右もしくは左という人も存在するのか。そりゃあアキネーターの答えにだって「たぶんそう、部分的にそう」が存在するくらいですからね。筆者が村上くんを思い浮かべてアキネーターに挑んで「左利きですか?」と聞かれた時には「たぶんそう、部分的にそう」と答えなきゃいけませんね。
「左ってなんかカッコいいよね。カッコよくない?」
「LITさんリベラル思想なんスか? 護憲派?」
村上くんはもう少しブログに載せられることを言ってほしいです。
「でも、左ってほんと不便ッスよ。駅の改札でめっちゃ腕クロスしますもん」
筆者のお土産の煎餅を齧りながら、村上くんは言います。言われてみれば確かに、改札って右手側にしか切符を入れる機構が付いていません。人間無意識のうちに利き手で物を持ちがちなので、これは本当に大変なのでしょう。
「それならほら、スマートウォッチにすればいいんじゃない? Suicaと連携できる端末あるし、左利きならちょうどいいよ」
左利きの人は、右手に時計を着けることが多いです。これなら改札側に時計が来るので、タッチもラクになるハズです。左利きを救う、我ながら完璧なアシスト。決まった、勝った!
すると村上くんの目からスッとハイライトが消え、
「あー、オレ時計は左手にしてますわ。ほら」
スーツの袖を捲って見せてくれました。LITさんのフォロー返して!!